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after1

 
「そういえばさ……私の名前知ってる……?」

付き合い始めて3日が経ったくらいに恐る恐る聞かれた。今更すぎるだろ。名前くらい、知ってるし。

「知ってるけど」
「そ、そっか!呼ばれたこと、あまりないから……」

知ってると答えると、何か言いたげに視線を下で泳がせた。名前で呼んでほしいんだったら素直にそう言えばいいのに。普段もっと照れるようなことを無意識に言ってくるくせに、こういうのはためらうんだな。

「……なまえ」
「!?」
「今日の昼飯学食にするけどなまえは?」
「ちょ、ちょっと待ってそんないきなり……!」
「ハァ? みょうじが呼べって言ったんじゃん」

直接「呼んで」って言われたわけじゃないけどそういうことだろ?何をそんな戸惑うことがあるんだよ。

「名字も一回しか呼ばれてないのに……」

……憶えてたのかよ。しかもカウントしてんじゃねぇ。確かになまえのことを直接名字で呼んだのは電車で居眠りしてた時と告白を促した時の2回だけだ。でもそれは俺が元々そういう性格ってだけでなまえがどうこうという問題ではない。恋人という立場を手に入れた今、名前呼びを躊躇う理由はない。

「あ、嫌というわけではなくてね、なんていうか刺激が強すぎるというか!」
「名前呼びくらいで刺激強いとか言ってどうすんだよ。キスしたくせに」
「!!」

なまえはクソ真面目だし経験もないだろうから、そういうステップはちゃんと順序立てたいって思ってそうだ。この前キスした時も戸惑ってたし。あの時俺はキスしたいと思ったからした。なまえも目を閉じて受け入れたからには同罪だと思う。

「それは、そうなんだけど〜……」

なまえは顔を赤くしてもごもごと口を動かした。……可愛い。これからもっとすごいことする時はどんな反応するのかと思うと楽しみだ。

「なまえも俺のこと名前で呼んで」
「え!」
「彼氏を名字で呼ぶ気かよ」
「ううんっ。じゃあ、えっと……臣くんとか……」
「却下」
「えええ何で!?宮くんがそう呼んでるの聞いて可愛いと思ったんだけど……!」
「アイツと同じ呼び方すんな。普通に呼び捨てでいい」
「!」

何で彼女に宮と同じ呼ばれ方されなきゃいけないんだよ。嫌に決まってんだろ。そういえばなまえが誰かのことを呼び捨てにしてるのって聞いたことない気がする。赤葦に対してもくん付けだし。

「きょっ、聖臣……くん……」
「……」
「ごめん、やっぱ呼び捨ては……」
「いいよ、それで」

多分性格的に人を呼び捨てにすることが出来ないんだろう。一生懸命呼ぼうとした姿が可愛かったから、まあ許す。



( 2020.7 )
( 2022.7 修正 )

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