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「月島くん今日の放課後時間ある?」
「ごめん、ちょっと急ぐ用があるんだよね」
「そ、そっか!」

月島くんに呼び出しを断られるのはこれで何回目になるだろうか……さすがに挫けそうだ。

「……日曜日だったら部活ないし暇だけど」
「え? い、いいの!そんなたっぷり時間使うようなことじゃないし!」
「……ふーん。じゃあまた明日」
「うん、ばいばい」

告白しようと決意したはいいものの、月島くんはなかなかそのチャンスを与えてくれない。放課後、ちょっとだけ……部活が始まる前のたった十分くらいの時間を貰えればいいのに。
月島くんは鈍い人じゃない。むしろ平均よりかなり鋭い方の人だと思う。きっと私がどういうつもりで声をかけてるかぐらいわかってるはずだ。私の気持ちを知りながら呼び出しに応じない理由として考えられるのは、私の告白に頷く気がないから。間接的に断るという月島くんなりの優しさなのかもしれないけど、私はちゃんと自分の口で気持ちを伝えてすっきりしたいと思う。
告白くらい、させてくれたっていいのに。


***


「あ……!」
「……」

中庭近くの自販機で予期せず月島くんと遭遇した。私はこの自販機でしか売っていない梅ソーダを求めてここまで来た。購買から遠いここの自販機を利用する生徒は少ない。
思わぬ2人きりというチャンスに心が焦った。今ここで言わなきゃ、もう私が気持ちを伝える機会はないかもしれない。

「あのさ……!」
「あ、ツッキー!」

月島くんを逃がさないようにと先手を打った直後、山口くんの明るい声が月島くんを呼んだ。彼のことももちろん知っている。月島くんを追っている限りはどう足掻いても視界に入ってくる存在だ。
絶妙なタイミングで邪魔をしてくれた山口くんは遅れて私の存在に気付き、顔を青くした。

「名字さんも……アッ邪魔した……!?」
「何言ってんの。行くよ」
「え、でもいいのツッキー!?」
「ま、待って!!」
「!」

山口くんの登場に乗じて逃げようとする月島くんを捕まえるために声を張った。自分でも思ったより大きな声が出てしまったと思ったけど、もうなりふり構ってる余裕なんてなかった。

「私、ずっと月島くんに伝えたいことがあって……聞いてほしい」
「は……」
「え、え……」

呼び出しに応じてくれないんだから、このチャンスに縋るしかないじゃん。覚悟はだいぶ前からしていた。結果がどうなろうが山口くんがいようが、全て受け入れられる。

「私、1年の時からずっと月島くんのこと……」
「な、は、ちょっと!」
「名字さん!?(俺いるけどいいの!?)」
「好きです……!!」
((言いよった……!))

言った。言ってやった。いつも眠たそうな月島くんの目が大きく開かれて私を映している。レアな表情だと思うと目を逸らすことができなかった。見納めになるかもしれないその顔をしっかり目に焼き付けておこうと見つめる視界の端で、山口くんがそそくさと去っていくのがわかった。

「少しはムードとか考えなよバッカじゃないの!?」
「!」

少し経って、とても大きなため息をつかれた。「バカ」と言われてきゅんとしてしまったのは、決して罵られたい願望があるからとかじゃない。色白の月島くんの頬と耳が明らかに赤く染まっているからだ。この顔を見られただけでも告白して良かったと思えた。

「だ、だって月島くんすぐ逃げちゃうんだもん」
「それは名字さんから告白させたくないからだろ、察しろよ」
「はあ……え!?」
「日曜日デート誘ってんのに気付かないし」
「……!?」

それって、月島くんの方から私に告白する気があったように聞こえてしまうんですけど。信じられなくて不躾に月島くんを見つめる。眉間に皺を寄せつつも、やっぱり頬と耳は赤いままだった。
ていうか日曜日デートに誘われてたの?いつだろう?必死で記憶を遡っていく。もしかして「日曜日だったら部活ないし暇だけど」ってやつ?

「あれ誘ってたの……!?」
「……」

聞いたらジト目で睨まれた。いやいや私悪くないよね?呼び出しを断られた後に希望なんて持てるわけがないじゃん。誘うんだったらもっとストレートに誘ってくれなきゃわかんないよ。

「何回かデートを重ねて、俺から告白したかったんですケド。本当空気読めないよね」
「!!」

辛辣な言葉が続いても私はノーダメージだ。流石にここまで来たら確信が持てる。私達は両想いで、月島くんが毒を吐くのは単なる照れ隠しだということがわかったから。

「じゃあ、あの、今からお願いします」
「……名字さんがさっき言ったのと以下同文です」
「な、何それズルい!」

そうとなれば月島くんの口から「好き」が欲しい。自分から告白したかったと言ったくせに月島くんはその言葉をはぐらかした。

「とりあえず次の日曜日映画でも観に行こうよ」
「!」

両想いだとわかっていながら、「好き」も「付き合おう」もあおずけされたままあと2日を過ごさなきゃいけないだなんて……やっぱり月島くんはずるい。好き。