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「#エロ」のBL小説を読む
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- ナノ -
「名字さん、次の日曜日空いてる?」
「空いてるよ。」
「この前言ってた美術館、一緒に行かない?」
「あ、うん。」


こうやって赤葦くんにデートに誘われるのはこれで3回目になる。デートに誘われるっていう時点で脈ありなのはほぼ間違いない……はず、なんだけど、こと赤葦くんに限ってはいまいち確信を持てない。普通好きな人をデートに誘う時って多少照れたりもじもじしたり、少なくともいつもと違う所作が出てしまうものだと思う。けれど今私の目の前の赤葦くんはいつもと何ら変わらない感じで、まるで業務連絡をするかのようにデートに誘ってきた。そして私が頷いたのを確認して雑談もなしに「また連絡する」と去っていった。わからない……赤葦くんという人が一体何を考えているのかが、わからない。


1回目のデートは無難に映画。ただ、私は流行りの青春映画や話題の洋画やアニメにも興味がなくて、赤葦くんの「名字さんの見たいやつでいい」というお言葉に全力で甘えてガチホラーをチョイスした。自分でも男の子とのデートでホラー映画とかないわって思ったけど、見たい欲求には勝てないしそういうところも含めてOKな人じゃないと付き合えないと思ったし。映画は面白かったけど赤葦くんは終始ローテンションで「ああ勿体ないことをしたかな」と少し後悔した。
しかしその2週間後、またデートに誘われた。行きたいところを聞かれて、元々行こうと思っていたフリーマーケットを提案したら赤葦くんは秒で頷いてくれた。ハンドメイド作家さん達が集まるフリマで、まあ女子らしい趣味ではあるんだけれど男の人はなかなか馴染めない空間だったと思う。あちこち目移りして何回か赤葦くんを置いてけぼりにしてしまって今度こそ終わったなと思った。
だから3回目があるなんて思ってもみなかったし、赤葦くんはどういう思考回路で私をデートに誘っているのかが理解できない。














3回目のデートは美術館。私が何気ない会話の中で行きたいと言ったのを憶えていてくれたのか、赤葦くんの方から提案してくれた。
作品を見てる時は夢中で楽しかったけど、美術館を出てからまた赤葦くん放置で一人勝手に楽しんでしまったと後悔した。好きなものにすぐ没頭してしまうのは私の悪い癖だ。本当、赤葦くんは何が楽しくてこんな自分勝手な私とデートをしているんだろうと不思議でしょうがない。絶対楽しくないでしょ、こんなの。


「ねえ、楽しい……?」
「え、何で?」


基本的に抱いた疑問はぶつけないと気が済まない性格だ。私の好きなことをさせてもらえるのは嬉しいけど、赤葦くんに不快な思いをさせてしまっているんだったら気が引けるしわざわざ一緒に行く必要はないと思う。


「私の趣味に付き合わせちゃってるし……無理させてるなら申し訳ないなと思って。」
「そんなことないよ。」


聞いてみても赤葦くんはしれっとしている。本心で言ってるのか取り繕っているのか、じいっと見つめてみてもやっぱりわからなかった。


「名字さんが何かに夢中になってるのを見るのが好きなんだよね。」
「……え?」
「ずっと見てられる。」
「!?」


なんか今、平然とすごいこと言われてる気がする。え、これさらっと聞き流しちゃいけないやつだよね?もしかして私が夢中になって作品を眺めてる時、赤葦くんはずっと私のこと見てたってことなのかな。それってものすごく恥ずかしいし、そんな赤葦くんは傍目から見たらちょっと危ない人に映ってしまうのでは。


「名字さんが好きなものには興味あるし、名字さんの目に映るものを少しでも共有したいって思ってるし……うん、楽しいよ。」


確かに聞きはしたけどそんな事細かくプレゼンしなくていい。何でそんなクサいこと平然と言えるの。赤葦くんって常識あるように見えて実は結構ズレてる人だったんだとこの時思い知った。


「……だから、また誘ってもいいかな。」


さすがに照れたのかな、赤葦くんのポーカーフェイスが少しだけ崩れた気がした。
……もういっそ告白してほしいと思うんだけど。


「うん。今度は赤葦くんの好きなところ行こうよ。」
「え。」
「私も、見たい。何かに夢中になってる赤葦くん。」
「!」


好きな人の好きなものを理解したい……その気持ちには共感した。赤葦くんの好きなものを知ったら、多分もっと赤葦くんのことを好きになれる。そして自分の気持ちも赤葦くんの気持ちも、確信できるものに変わるだろう。





■■
・高いセンス。芸術面に秀でた才能
・目立ってしまって息が詰まることも
・芸術に心を奪われ感情が変わりやすい
・リスクを恐れず果敢にトライする
・ルールに縛られたくない
・性別を問わず定評がある
・人見知りせず距離を徐々に詰めていくのがうまい
・人を見る目に長けている
・気分屋


リクエストありがとうございました!