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「#エロ」のBL小説を読む
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生徒会をやってると言うと周りは「すごい」とか言ってくれるけど、特別すごいことはしていないしすごい人やから入れたってわけでもない。
昔から怒られることが苦手で、その結果の当たり障りのない授業態度と内申点、そして忙しくない部活動っていうのも要因やったと思う。先生にやってみないかと声をかけられて受験に有利そうやなという安直な考えで頷いただけ。私より生徒会のイメージに相応しい人は同じ学年にたくさんいる。
実際入って副会長という役割を貰っても大して変化はなかった。いや、私が変わろうとしなかっただけや。そのツケが今になって押し寄せてきて、もっといろいろ積極的に苦労する道を選んどけば良かったなあと後悔している。


「何ブツブツ言っとんの?」
「ーーッ!?」


朝、人通りが少ない部室棟の裏で原稿を読み込んでいると北くんがひょっこり現れて、ボソボソと出していた小声が裏返った。


「金曜日に壮行会あるやんか。」
「うん。」
「それのね、司会進行することになって。」
「ああ、名字さん生徒会やったね。」
「うん。」


今週の金曜日にインターハイの壮行会がある。今年全国に進むのはサッカー部と弓道部と、北くんが所属する男子バレー部。今私が熱心に読みこんどるのはその司会進行の原稿や。


「ここで練習しとんの?」
「うん……人前で喋るの、あんま得意やなくて……吐きそう……。」
「そんな簡単に吐かんやろ。」
「わからんやんかあーー……」


特別難しいことを喋るわけではないけど、私なんかの声が全校生徒の耳に入ると思うとめちゃくちゃ緊張する。私は元々人前に出て喋るのは得意やないし、授業で教科書読むのにも緊張する小心者なのに。


「本番なんて緊張するに決まってるやん?」
「……ん?」
「え?」


てっきり同意してもらえると思ったのに不思議そうに首を傾げられてしまって、私も同じ方向に首を傾げた。


「実力以上のものを期待するから緊張すんねん。普段通りやったらええ。」
「!」


そんなんできたら苦労しない……多分相手が北くん以外の誰かやったらそうやって反発していたと思う。でも私は北くんの言葉をすんなりと受け止めた。その言葉が北くんの今までの努力とか生き方に裏付けされた信条やってわかっとるから。
普段通りは無理かもしれないけど、私が勇気を出して司会に立候補した理由を忘れなければ大丈夫な気がしてきた。


「けど司会っていつも鈴木がやっとらんかった?」
「……うん。今回は、私がやりたいって立候補した。」
「へえ……何で?」


いつもはこういう役目はもう一人の副会長である目立ちたがりの鈴木くんに任せとる。でも今回は……今回だけは、どうしても私がやりたかった。


「北くん、キャプテンやから壇上に上がるやろ?」
「うん。」
「……」
「?」


1年の時から見てきた北くん……ずっと「ちゃんと」やってきた北くんがバレー部のキャプテンになったと聞いた時は関係ないくせにとても嬉しかった。監督ようわかっとるやん、なんて何様なことも思った。
勝手に見守ってきたその背中が見えなくなってしまわないように、少しでも近づきたかった。


「近くで送り出したいっていう、私のワガママ。」
「……そうか。」


そこそこの勇気を振り絞って出した言葉を北くんは平然と受け止めた。ちゃんとわかっとんのかなあ……いや、わかっとらんやろな。まあ北くんらしくてええと思う。気付いてほしいわけでもないし。


「明日もここで練習する?」
「うん。」
「なら、明日から金曜日まで毎日聞いたる。」
「!」
「人前で練習した方がええやろ。」
「なるほど、確かに!」


思わぬ申し出に心が躍る。明日から金曜日まで、毎朝北くんに会えるなんてラッキーやなあ。北くんの前でちゃんと言えるようになったら、確かに全校生徒を前にしても怖ないや。


「……」
「……ん?」


何かを訴えるように、北くんの黒目がじいっと私を見つめた。え、何やろ、今の突っ込むところやった?ボケ見逃した?


「……本当は、毎朝名字さんに会いたいっていう俺のワガママやで。」
「……!?」


何でそんな思わせぶりなこと、いつもと変わらんテンションで言えんの……!ちょっとくらい緊張した様子を見せてくれれば、私やってウィットに富んだ返しができたかもしれないのに。
……いや無理やな。たとえ私が一晩中考えて愛の言葉を用意してきたとしても、北くんのうっすら笑顔を見たら全部吹っ飛ぶんや。




■■
・ひたむきな姿に惹きつけられる
・自分の意思を突き通す。周りに歩み寄ろうとしなくて周りを困らせることも
・情熱を内に秘めた野心家。自分の力で成果を勝ち取っていく力強い性格
・彼女になってもらって高めあいたいと思われる
・ストライクゾーン自体あまり広くない
・自分が好きになった人のことは誰に何と言われても気にも留めない


リクエストありがとうございました!