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「#エロ」のBL小説を読む
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自分が周りにどう思われてるのかは大体把握している。何考えてるかわからないとかとっつきにくいとか、多分そんな感じ。普通の人より友達は少ないけどそれがマイナスだとは思わない。少なくとも私の人生においては。それよりも他の人の意見に左右されてしまうことの方が怖い。他人の意志が少しでも入ったら何気ない事で後悔してしまいそうなのが嫌だ。私はいつでも自分の意志を持っていたい。白鳥沢学園を選んだのも東京の大学を受験するのも全て私の選択。


「!」
「……」


……そして、この道を選んでこの角を曲がろうとしたのも私の選択である。
放課後本屋に寄った帰り道でぶつかったのは同じ学校の牛島くんだった。ジャージを着ているからおそらく部活の練習の一環で走っているんだと思う。
大した衝撃ではなかったものの、牛島くんの高校生離れした体格と私の貧弱な身体があいまって尻餅をついてしまった。かっこわるい。尻餅をついた状態で見上げた牛島くんは余計に大きく見えた。


「すみません。」
「いえ……」


私と牛島くんに面識はない。牛島くんは学校で有名だから私が一方的に知っているだけだ。私に向かって手を差し伸べる牛島くんは珍しく焦ってるように見えた。……「珍しく」なんて言ってしまったけど私は普段の牛島くんを知っているわけではない。単なるイメージだ。


「……?」


牛島くんはいつまで経っても手をとろうとしない私に首を傾げた後、ジャージのポケットから出したハンカチで手を拭いてからもう一度差し伸べた。……そういうことじゃない。


「だ、大丈夫です。」


私は牛島くんの手を借りることなく立ち上がった。せっかく拭いてもらったけど、だからこそ余計に私の汚い手で綺麗な手を汚してしまうのが忍びなかった。



そんなことがあってから、私は校内で見かける度に牛島くんを目で追うようになった。人はこれを恋と呼ぶのかもしれない。でも決してそういうわけではないと否定したい。
私が牛島くんを見るのは一つの芸術を見る感覚に近い。作品を鑑賞しているのだ。丁寧に鍛え上げられた筋肉には牛島くんの確固たる信念を感じた。トレーニングはもちろん、口にするもの、歩き方、人との付き合い方……それら全てによって構築された結果なんじゃないかと思う。端正なものはずっと見ていられる。
















「!? ……!?」
「……」


そして事件は唐突に起きた。
放課後、3階一番奥の空き教室でうたた寝をしてハッと目を覚ましたら牛島くんがじいっと私を見下ろしていて思わず二度見してしまった。


「え、な……え?」
「……悪い、本当はもっと早く起こそうと思っていたんだが。」
「え、あ、そう。」
「……」


なるべく自然な動作で口元を拭う。多分大丈夫だとは思うけど一応。
早く起こそうと思っていたのに何故そうしなかったのかは言うつもりがないようで、少し待ってみても続きが紡がれることはなかった。牛島くんは私以上に何を考えてるかわからない人だと思う。真意を汲み取ろうとすると一点の曇りもない瞳でまっすぐ見返されるものだから、その美しさに息を呑んでしまう。牛島くんの意志は私なんかが量れるものではないんだと思い知らされる。


「何か用?」
「……佐藤先生が名字さんを探していた。」
「マジか。」


佐藤先生といえば私のクラスの担任であると同時に部活の顧問でもある。嫌だな、話長いんだよな。先生に呼ばれたなら早く行かなきゃいけないんだろうけど、それよりも何で牛島くんが私の名前を知ってるのかという方が気になってしまってなかなか動き出せない。


「少し話していいか。」
「え……す、少しなら。」


牛島くんの視線は私から外れない。いったい牛島くんは私を見て何を思っているんだろう。牛島くんにどう思われてるかが気になって仕方がない。あまり乱れることがない心音が煩くなってきて、余裕のない返事をしてしまった。


「名字さんは俺のことをよく見ているが……」
「!」
「どうせ見るなら、バレーしてるところを見てほしい。」


牛島くんの言葉を聞いて、また心臓がぎゃんぎゃんと泣き喚く。
「牛島くん」はバレーという額縁があって初めて完成するのかもしれない。完璧な作品を見てみたい気持ちはもちろんあるけど少し怖いと思った。それを見てしまったらきっと、私の中に芽生えたものの正体に触れてしまうから。


「……うん。」


未知の世界を受け入れる覚悟をして、私は頷いた。





■■
・いつも感性で生きてる芸術家タイプ
・自分の思うがままに行動していけば大丈夫だと思ってる
・他人の意見に左右されることはない
・「行動が読めない」と言われるけど気にしない。
・ひょうひょうとした姿が男性の心の中に気になる存在として残る
・恋愛慣れしてない男性はもちろん、百戦錬磨の女たらしでも「今まであったどんなタイプの女性とも違う」と心をぐっとつかむ
・恋愛に対してとても消極的。どう行動していけばいいかわからない。


リクエストありがとうございました!