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「また観にくるね。」
「おう!また連絡する!」


出待ちのファンも疎らになってきた頃、最近デビューしたばかりの日向と親しげに話す女性が視界に入って侑と木兎の好奇心が騒いだ。


「翔陽くん今の誰ー?」
「可愛かった!!」
「高校の同級生です。こっちに住んでるらしくて、この前偶然会って!」


女性が去ってからすかさず肩を組んで日向を捕まえる。聞けば高校の同級生とのことだ。学生の時からコミュ力おばけと呼ばれてきた日向は友人が多い。先日のデビュー戦では彼の勇姿を見ようと多くのチームメイトや友人が集まった。


「それだけとちゃうんやろ?おおん?」
「えっ……」
「日向あの子のこと好きなの!?」


ただ、今の女性は他の友人達とは違うように見えた。日向に渡された差し入れは同級生があげるにしてはそこそこお高いものだし、そもそもマネージャーでもないただの友達がわざわざチケットをとって何回も観戦に来るだろうか。日向の態度が他のファンや友人に対する時とは違うことにも侑は目ざとく気付いた。


「ま、まあ……。」
「「!」」


照れながらも素直に認めた後輩を見て、侑と木兎の先輩魂に火が付いた。




















「高校の時は普通の友達だったんですけど……」
「うんうん、わかるでえ!」
「女の子って急に可愛くなるよなー!」


寮にて日向の話を聞く侑と木兎のテンションは大いに上がっていた。
彼女の名前は名字名前。日向の高校の同級生でその時は普通に友達と接していたが、先日久しぶりに会ったら大人っぽくなっていて可愛いなと思ったんだと、照れながらも日向は正直に話した。


「デート誘えば?」
「デート……!」
「あそこ面白かったよ!鉄道博物館!」
「あかんあかん、そんなん女の子興味ないねん。」
「そうなの!?」
「ベタに動物園でええやろ。」
「おれ動物園好きです!」


今日の様子を見る限り、相手の方も日向に好意的であることは間違いないだろう。そうとなれば後は順序を踏んで恋人へとステップアップしていくだけ。おそらくそういった色恋沙汰に慣れていないであろう後輩の世話を焼いてやろうと、侑が身を乗り出した。


「あ、今まさに名字さんから連絡きました。」
「えっ何て!?」


デートの誘い文句を送らせようと思った矢先に相手から連絡が来たようだ。プライバシーの考慮もせず日向のスマホを覗き込む侑と木兎。その文面は絵文字も交えた女子らしい愛想の良いもので、内容は今日の試合の感想だった。脈ありと判断するには十分な材料だ。


「こんなん向こうも完全好きやん〜。」
「マ、マジすか!」
「押せばいける!」
「わかりました……電話します!」
「おん、て、え、電話?」


この流れで文字でのやりとりを想定していた侑は日向の「電話をする」という大胆な行動に意表を突かれた。


「ごめん今大丈夫? ……うん、あれ美味かった!」
「翔陽くんて意外と大胆……」
「え、何で?電話の方が手っ取り早くない?」
「……」


日向や木兎のような恋愛の駆け引きをしないタイプにとっては、電話は単に手っ取り早いツールでしかないのかもしれない。2人の男前な考え方を見せつけられて少し悔しさを感じてしまって「恋愛経験値では俺が一番上のはずや」と、侑は自分で自分を励ました。


「うん、それすげーわかる!おれもやったことあるよ。」
「……世間話長ない?」
「好きな子とはいっぱい話したいよなー、わかる!」


話が盛り上がるのは良いことだが、このピュアな後輩の場合単に世間話が楽しくて終わった……なんてオチもあり得る。


「へー、面白そう!じゃあさ、今度そこ行こうよ。」
「「!」」
「え?全然平気!名字さんが好きなものなら一緒に見たい。」
「「!?」」


相手の声は聞こえないがとりあえず良い流れでデートの約束を取り付けたことはわかった。侑の心配もよそに、日向は思っていたよりもずっと男前だったようだ。


「すみません、話の流れでプラネタリウムになりました。」
「お、おん、ええんとちゃう……」
「日向すげえな!?」
「?」
















「プラネタリウムって小学生ぶりに見たけどすごかった!」


話の流れで星を見るのが好きだと零したら一緒にプラネタリウムに行こうと誘ってくれたのは日向くん。高校の同級生で今はプロのバレー選手。昔からクラスのムードメーカーのような存在でいい人だとは思っていたけど、2ヵ月前に偶然街で出くわして話し込んで、何回か試合を観に行ってるうちにどんどん惹かれていった。
日向くんの笑顔は私を前向きにしてくれる。日向くんの話を聞いてると、転職を見据えて新しい資格を取ろうか迷っていた私の悩みがとてもちっぽけに思えた。


「日向くん、ありがとう。」
「え?」
「日向くんの笑顔見てると、私頑張れるんだ。」


少し照れくさいけれどどうしても伝えたかった。純粋な日向くんのことだからきっと言葉の通りに受け取ってくれるはず。私が日向くんに対して抱いてる恋心には気付いてもらえなくていい。日向くんに救われたこと、そして日向くんのことをずっと応援してると伝えられればそれだけで幸せだ。


「おれも、名字さんの笑顔見るとすげー頑張れるよ。」
「あはは、そんな大袈裟な……」
「んー……ちょっと違うかも?どっちかというとおれが名字さんを笑顔にしたくて、そのために頑張れるっていうか……」
「……ん?」


私の存在が少しでも日向くんの力になれるんだったらこれ以上に嬉しいことはない。……はずなのに、そんなことを言われたら「これ以上」のことを期待してしまうんですけど……。日向くんの言葉は裏表がないとわかっているから余計に。


「そんなの、日向くんなら簡単にできちゃうよ。」
「!」


期待が膨らんでいってもやっぱり直接的な言葉を言うのは怖くて、私なりに精一杯の「可愛い笑顔」を浮かべてみる。意識しすぎて果たして可愛いと思ってもらえてるのかはわからない。でも私を見た日向くんが嬉しそうにはにかんだから、引かれてはいないと思っていいはずだ。


「これからも名字さんを笑顔にできるように頑張るので、よろしくお願いします!」
「は、はい!」


勢いよく頷いたはいいものの、あれ、これってどういうことだろう?日向くんの存在だけで私は笑顔でいられるわけだし、日向くんが頑張ってるのはいつものことだから……あれ?今までと何が変わるんだろう?


「何やねんそれはよ付き合えや!!」
「「!?」」


まあそれでもいいか、と思いかけた時知らない人が出てきた。




■■
長くなったうえに侑が出しゃばりました、すみません。

・爽やかで少女のような心の持ち主
・前向きな発言と明るい笑顔
・手を抜いたり人を頼ったりしようとはしない
・男性人気が高いけど好きな人の前ではなかなか自分からアタックできない
・周囲がくっつけようとしてくれる
・恋愛におけるステップを一歩一歩ゆっくりと登っていく


リクエストありがとうございました!