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数日経った頃、リツと再会した。
俺は狐の姿で密猟の奴らに追われてて、治りかけの足を挫いてうまく動けないでいた。この前と全く同じ状況でリツが目の前に現れて夢なんかと思った。もう二度と会うことはないと思っていた。思いがけない再会に気持ちが昂るのを感じたものの、あんな別れ方をした手前リツに会わせる顔がない。


再会したリツは俺のことを覚えとらんかった。記憶喪失になってしまって、記憶を戻すためにここまで来たらしい。
確かに俺やったら術を使って記憶を戻すことはできる。けど……リツの記憶を戻したら俺が騙してたことも思い出してまう。そしたらリツに嫌われてまうかもしれん。
リツに嫌われてしまうくらいやったら、記憶なんて戻らんでええ。俺はリツの前では無口な狐を演じ続けた。


「あのリツって子、大事にしとるやん。」
「……」
「知り合い?何で人の姿見せへんの?」


俺がリツに対して特別な感情を抱いてることは、ツムにもキタさんにもすぐバレた。


「こんな体質、気味悪いやろ。」
「……」


俺の言葉をツムは否定せんかった。この体質が周囲からどう思われているか、嫌という程わかってるからや。


「気に入っとんなら記憶戻してやればええのに。」
「……」
「ずっとここに閉じ込めとくつもりか?あの子お姫様なんやろ?護衛が黙っとらんやろ。」
「……わかっとる。」


このままだんまりを決めていてもどうにもならんことくらい、わかっとる。
村の外に残してきた護衛の奴らがいつまでも大人しくしてるとは限らん。野蛮な民族にお姫様が監禁されとるって部隊を送ってくる可能性もないとは言い切れん。そしたら村のみんなにも迷惑をかけてまう。
……何より、リツの悲しむ顔は見たない。俺のワガママを押し通すことはできん。













「……寝られへんの?」
「!」


その日の夜、狐の姿でリツの部屋に入った。


「オサムくん……」
「……」


リツが何か言いたげに俺を見た。俺はその視線に気づかないフリをしてリツの隣に寝転んで目を瞑った。リツは何も言わずに布団をかけてくれた。


「私、今の記憶も……忘れたくないなあ……」
「……」


つまらない意地を張るのはもう終いや。






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