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俺とリツちゃんが出会ったのは4年前。オープンしたての俺の店にリツちゃんがやってきたのがきっかけだった。
あの時はアオバ城のお姫様が一人で来たもんだから吃驚したなあ。
少し息を切らして入ってきたリツちゃんは「町に出たくて城を抜け出してきたの」と悪戯に笑った。人懐っこくて可愛いお姫様だなあと思ったけど、これ俺が誘拐したと思われたらどうしようと内心ビクビクしていたのを覚えている。
お城では紅茶ばかりだからコーヒーが飲みたいと言ったリツちゃんにホットコーヒーを淹れてあげると、リツちゃんは苦いと眉間に皺を寄せた。
当時14歳のリツちゃんには大人の味だったみたいだ。蜂蜜を混ぜてあげると美味しいと嬉しそうに飲んでくれた。


それからリツちゃんは定期的にお店に来てくれるようになった。
お忍びなんだとリツちゃんは言っていたけど、リツちゃんが店に来た翌日には執事から「お世話になりました」とお礼の手紙が届くから、リツちゃんの行動はバレバレらしい。


「スガさんは……」
「ん?」
「な、何でもない!」


リツちゃんに好意的に思われてるってことにはなんとなく気付いていた。
俺を見つめて時折頬を染めるリツちゃんは可愛らしい普通の女の子だ。
けれどリツちゃんは貴族のお姫様。一方俺は普通の町人A。きっと俺ではリツちゃんを幸せにすることなんてできない……そう思って、リツちゃんの前では必死に"優しいお兄さん"を演じた。


「はああ……。」


珍しく執事くんと一緒に店を訪れたと思ったらリツちゃんが記憶喪失になってしまったということだった。
……これはこれで良かったのかもしれないな。
噂によるとシラトリザワ王国の皇子との縁談があがっていたらしいし……俺のことは綺麗さっぱり忘れて、王族として暮らした方がリツちゃんも幸せになれるはずだ。


カランカラン


「スガさん!」
「!」


そろそろ開店の準備をしようと思っていたらリツちゃんが勢いよく入ってきた。
走ってきたのかな、息切れしている。その姿が初めて会った日のリツちゃんと重なって懐かしく思った。


「私、思い出したよ!」
「そっか……よかったね。」


どうやら記憶が戻ったことを報告しに来てくれたらしい。


「あ、あのね……実は、結婚の話がきたんだけど……」
「……うん。」


記憶が戻ったっていうことは皇子との縁談のことも思い出したってことか。お別れを言いに来てくれたのかな。


「私……スガさんがいい……!」
「……!?」


持っていたふきんを落としてしまった。
え……嘘でしょ、まさか、国の皇子より俺を選んでくれるってことなの、リツちゃん。


「スガさんからしたら私は妹みたいな感じかもしれないけど……す、好き、なの……!」


顔を真っ赤にして告白をしてくれたリツちゃんは可愛らしい普通の女の子だ。
リツちゃんは勇気を出してくれたというのに、立場を気にして怖気づいてしまった自分が恥ずかしい。


「俺を選んでくれてありがとう。」
「!」
「言わせちゃってごめんね。俺もリツちゃんのことが好きだよ。」
「ほ、ほんと!?」
「うん。」


立場なんて関係ない。俺はリツちゃんが好きだ。


「……反対する人もいるだろうけど、絶対負けないから。」
「うん!反対なんてさせないよ!」


まずは手強そうなリツちゃんのお兄さんをどうにかしないとかな。





■■
スガさんルートでした。





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