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「まだ着かないのか?」
「地図だとこの辺りなんだけど……」


ケンマさんから貰った地図を頼りに進んでいく。地図を見る限りではもう近いはずなんだけど……なかなか村らしきものが見えてこない。


「あ!見て、あそこ……あれ!?」


赤い門のようなものが見えて振り返った時、みんながいなくなっていた。え、嘘、さっきまで一緒にいたはずなのに。


「!」


みんなを捜してキョロキョロしていると視線を感じた。
茂みの隙間からこちらの様子を窺う狐を見つけた。


「も、もしかしてイナリ族の人……?」
「!」


イナリ族は狐に変身できる民族だとクロオさんから教えてもらっている。
もしかしてと思って聞いてみたら明らかに反応して警戒心を露わにされた。


「き、危害を加えるつもりはありません!イナリ族の方にお願いがあって、アオバ城から来ました。」
「……」


あまり刺激しないようにその場から声をかけた。


「どこ行ったあの狐!?」
「絶対捕まえろ!高く売れる!」
「!」


遠くから荒々しい声が聞こえてきた。アキラやツトムくんの声ではない。どうやら狐を捜しているようだけどその理由は友好的なものではないみたい。


「追われてるの?」
「……」


狐は私の問いかけには答えず、この場から離れようとした。
よく見たら足を引きずっている。怪我をしているようで走れないみたいだ。
このままじゃ捕まっちゃう……!


「!?」


私は狐を抱き上げて走った。怪我をしたこの子よりは速く移動できるはずだ。
しかし長時間全力疾走できる程の体力はない。視界の端に見つけた洞窟に逃げ込んだ。


「しー!」
「……」


腕の中で暴れる狐をぎゅっと抱きしめる。私のことも信用できないかもしれないけど、もう少しだけ我慢してほしい。


「……もういいかな?」


しばらくして人の気配はなくなった。
抱きしめていた狐を解放したけど狐は逃げずにその場に座り込んだ。


「あ……怪我してるんだよね?えーと……」


そうだ、怪我をしてるから動けないのか。
残念ながら治療道具はアキラが持っている。私は髪をまとめていたスカーフを外して狐の足に巻いた。


「ないよりはマシかな?」
「……」


医療の知識なんてないけど多分何もしないよりはマシだと思う。
狐は相変わらず何も言わずにじいっと私を見ている。


「っくしゅん!」
「……」
「! ありがとう。」


肌寒くてくしゃみをしたら長い尻尾で私を囲うようにして寄り添ってくれた。
少しは警戒心を解いてくれたかな。







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