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半分こ

「静雄!」
「ん?」
「ソフトクリーム食べに行こう!」


放課後、帰り支度をする静雄に名前が満面の笑みで言った。


















「あ!あそこだよあそこ!陽菜乃が美味しいって言ってたの!」
「………」


結局一緒に来てしまっている。
女友達と行けばいいじゃないかとか、男がソフトクリームなんてとか、いろいろと言いたいことはあったが、名前の輝く笑顔を前に断ることはできなかったらしい。


「私はね、初めて行くお店では必ず定番を頼むんだよ!何故かというとね、定番を食べることでそのお店のレベルが……」


それに、静雄だってなんだかんだ名前が自分の隣で笑っていることに安心している。
自分と一緒にいたら危険な目に合うと言った時、名前は間髪入れずにそれでも構わないと言ってくれた。その言葉が静雄にとってどれほど救いになっただろうか。


「なっ……新作、抹茶あずきソフト……!?」
「……バニラなんだろ?」


ソフトクリームの定番といえばバニラ。先ほど初めて行く店では定番を食べてその店のレベルをはかると豪語していた名前だが、新作の抹茶あずきソフトの文字を見つけるとその決心が簡単に揺らいだ。何故なら豆類とお茶は名前の好物ランキングで上位を占めるからだ。そんな2つがタッグを組んだソフトクリームがあるのだから、スルーすることはできなかった。


「いや、でも……!私は……ッ」
「コレとコレくれ。」


後ろの列を無視して悩みまくる名前をよそに、静雄がバニラソフトと抹茶あずきソフトを頼んだ。




















「静雄は頭良いね!」
「別に良くねーよ。」


名前がバニラソフト、静雄が抹茶あずきソフトを手に公園のベンチに座っている。丁度大きな木が日陰になってくれて割りと涼しい。


「だって半分こ作戦なんて……!」
「ぶっ」


静雄は名前が悩みすぎてまどろっこしいと思ったから両方買っただけであって、特にその後……つまり半分こすることなんて考えてもいなかった。そんな下心なんて無いんだと弁解しようとしたが、その必要はなかった。


「そんな、お友達上級技を……!」
「………」


名前の方にそんな考え方が一切無いからだ。
名前の中で静雄は大切な友達第一号で、それ以上でもそれ以下でもない。今まで接してきてわかっていたはずなのに、今この瞬間思い知らされて静雄は頭が痛くなった。


「……俺いらねーから両方食え。」
「え……ダ、ダメだよ!静雄が買ってくれたんだし……」


一瞬迷いを見せたが名前はすぐに首を振った。家が貧乏なせいで食べ物には貪欲になってしまうらしい。


「じゃー俺が全部食う。」
「ひ、ひどい!静雄は私と半分こしてくれないの!?」
「………」


もしこれがあんぱんとかたい焼きなら静雄だって何の気兼ねもなく半分名前に差し出す。問題なのはこれがソフトクリームで、関節キスが免れないというところにあるのだ。もちろん名前がそんなことを気にしてないってことは痛い程よくわかっている。
……が、どうしても意識してしまう自分が嫌だったのだ。


「すきあり!」
「なっ……」


一瞬の隙をついて名前が静雄の右手を両手で固定し、握られたソフトクリームにかぶりついた。いろんなショックで身動きが取れず名前を見下ろすと満足そうな笑顔。


「ふっふっふ、私がこのくらいで諦めると思いますか!」
「………」


名前の両手に握られた静雄の手がどんどん熱を帯びていく。
ちなみにさっきまで名前の手に握られていたソフトクリームはどこへ行ったのかと言うと、名前の足の間に挟まれていた。静雄が思わずその光景に目を奪われている間に、名前はもう一口あと一口と抹茶あずきソフトをかじった。


「はい、静雄も食べていーよ。」
「っ…!」


そして静雄の視線に気づくと、自分の足に挟んでいたソフトクリームを静雄の前に差し出した。
さっきまで名前の足に挟まれていたものが自分の目の前にある。だから何だという話なのだが、思春期真っ盛りの男の子はやはり意識してしまうのだ。例え差し出した張本人が全く意識していないとしても。


「い、いらねェ……」
「何で!?バニラおいしいよ!このお店なかなかのレベルだよ!」


しかし名前がそう簡単に引いてくれるわけがない。断る静雄にぐいぐいとソフトクリームを近づける。


「あーーー食う!食うから、んな近づけんな。」
「うん!」


今にも静雄の顔面にソフトクリームをつけるんじゃないかという名前のテンションに静雄が折れた。
静雄は観念して名前の手からソフトクリームを取ろうと思ったが名前は手を離さない。桃香を見てみると相変わらずニコニコ。おそらく名前の中に手を離すという考えは無い。


「……」
「おいしい?」


静雄は諦めて名前の脳内シミュレーションの通り動くことにした。
すると名前は満足そうな笑顔。静雄はこの笑顔が嫌いじゃない。むしろ、そう、ずっと見ていたいくらい。


「甘ェ。」






end≫≫
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