「名前ちんチョコちょうだーい」
「は?」
「今日バレンタインじゃん、だから俺が名前ちんのチョコもらったげる。」
「は?」
「……チョコないの?」
「逆にあると思ったの?」
「は?俺名前ちんがチョコ持ってんの見たんだけど!」


チョコを要求してきたと思ったら突然キレた紫原。なんで、紫原が私がチョコ持ってんの知ってんの?キモいと思わずでそうになった言葉を飲み込んで紫原を見上げる。奴は上から鋭い視線で私を睨みつけている。怖いとはもう思わなくなった。コイツはチョイチョイ私をこんな目で睨んでくるので慣れてしまった。これから黄瀬と約束があるのに、めんどくさいのに捕まったなぁ。紫原から視線を反らしてため息をつく


「チョコは友達にあげた。」
「…俺と名前ちんだって友達じゃん。」
「は?お前、前私に友達じゃないって言ったじゃん」
「、あん時は友達じゃなかったけど今は友達なの!だからチョコちょうだい!」
「…だから、もうあげたからないって。」


そう言ったきり紫原は黙ってしまった。その手は強く握りこぶしを作っていて、ブルブルと小刻みに震えてるように見えた。いつ振り上げられるかわからないその手に内心ビビる。これで殴られたら赤司くんに言いつけてやる。


「……じゃぁ明日、持って来て」
「、わかった。」


正直またチョコを用意するのはめんどくさかったけど、これ以上時間をとられると黄瀬に悪いので頷く。するとそれに気を良くしたのかへらりと破顔する紫原。よかった。これで殴られることないだろう。


「それじゃぁ一緒に帰ろー」
「ごめん、この後約束あるから」
「…誰と?」
「黄瀬」
「はぁ?何で?」
「チョコもらう」
「何?黄瀬ちん名前ちんに逆チョコしてんの?キモ」
「逆チョコじゃねーし、」
「じゃぁなんで」
「チョコ上げたからそのお返しにもらうの。」
「は?なんで黄瀬ちんにチョコあげてんの」
「だって、黄瀬友達だし。」
「はぁあああ??」


黄瀬のことを言った途端に機嫌が悪くなる紫原。コイツの沸点マジでわけわかんないな。めんどくせーと思ってたら制服のポケットに入れていた携帯が振動したからポケットから取り出す。この時紫原は何か言ってたけど無視した。携帯を見るとメールが来ていたので開くと黄瀬からだった。約束の場所でもう待ってるみたいだから早く行かなきゃ。今年もきっと黄瀬は大量にチョコをもらってることだろう。楽しみだ。ゴディバあるかな。ゴディバ。メールにすぐに行くと返信しようとすると紫原に携帯を奪われる。


「ちょ、返してよ!」
「無視すんなよ!!」


慌てて紫原を見上げると紫原は私の携帯を振りかぶった瞬間でえ"と思った瞬間に携帯は振り下ろされて床に叩き付けられた。ありえないんですけど!?慌てて携帯を拾えば画面は奇麗に割れてた。嘘でしょ。電源ボタンを押すと起動する画面。一応起動したけど操作ができない…!


「何すんの!?紫原!!ありえない!!」
「名前ちんの方がありえねぇし!なんで俺がいんのに黄瀬ちんとこ行くの!!」
「黄瀬にチョコ分けてもらうためだし!!」
「……はぁ!?名前ちん黄瀬ちんのもらったチョコ分けてもらいに行くの?」
「そうだよ!さっきからそう言ってるでしょ!!」」
「…言ってねーし、それなら俺のあげる!」


は?何コイツ笑ってんの?チョコのことは別として携帯のこと謝れよ。表情を先ほどと一転させて私の腕を引っぱる紫原。まさか紫原がもらったチョコを分けてくれるとは思わなかったけど私は先に黄瀬との約束がある。大体コイツは私の携帯を壊したのだ。そんな奴とこれ以上一緒になんていたくない。これ以上何されるかわかんないし、絶対明日赤司にチクってやる。絶対弁償させる。私の腕を掴んで引きずっていた紫原の腕を離させるために口を開く。


「だから!この後約束あるんだって!」
「じゃぁ断って」
「ほんっと、お前最低。」
「は〜?名前ちんに言われたくねー」
「意味わかんないんですけど。ていうかほんと離して」
「離したら黄瀬ちんのとこ行くんでしょ。」
「当たり前でしょ。ほんとお前ウザいよ」


そう言うとピタリと動きを止める紫原。その隙に腕を払おうとしたけど予想以上に強く握られてて手は離れなかった。むしろ前よりも強く握られた。痛い。「離してよ」と腕を振ってみても離れない。イライラする。携帯は壊されるし黄瀬も待たせてるし、紫原のチョコ用意しなきゃだし。もうチロルチョコでいいよね?ていうかチロルチョコだってもったいないと思うんだけど。


「なんで、そんなこと言うの」
「紫原はさっき私にした諸々の事を忘れたの?ウザいに決まってんじゃん。」
「…………名前ちんは俺のこと嫌いなの?」
「前までは友達だと思ってたけど、今日をもって嫌いになった。」
「……………」
「お前私が何されても許すとでも思ってんの?」
「…………」
「私そこまで心広くないし。ということで紫原死ね。」


紫原の腕を引きはがすのに躍起になりながら紫原の質問に応える。ほんと、友達だと思ってたのに友達じゃないとか言われるし、携帯壊されるし、腕痛いし、くっそ。何も言わなくなった紫原を特に気にする事なく紫原の手をつねったりだとか指を一本ずつはがそうとするも中々離れない。それどころか徐々に力が強くなってる気がする。痛い痛い。


「ちょ、紫原本気で痛いって!」
「………死にそう」
「!!??え!?なんで泣いてんの!?」
「むねがいたい」
「心臓!?病気!?救急車!!」


あまりの痛さに紫原の顔を見上げれば紫原はボロボロと涙を流していた。前屈みに私を掴む手と反対の手で胸を押さえる紫原の顔を覗き込めば辛そうに目を閉じてる。ついには紫原は涙を流したまま力なくしゃがみこんでしまった。これはいけない。何かの病気かもしれない。携帯は壊れてるから無理だけど、先生なら職員室にまだいるだろう。ズビズビと鼻をすすりながら嗚咽を漏らす紫原の背中を撫でながら顔を覗き込む。


「先生呼んでくるから!手離して紫原!」
「やだ、行かないで名前ちん」
「何言ってんのそれどころじゃないでしょ!!」
「う"ーっひく、うぇ…いっつも俺ばっかり……ずびっ」







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主人公の言動に一喜一憂して振り回される紫原

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