「おはよう!ごごごごございますっ!!」
え、何、怖い…
朝いつもの電車に乗っていると突然後ろから大声が聞こえてビクリと肩がはねる。
イヤホンを耳に突っ込んで音楽を聞いていた私でも大声と思うようなその音量にどんだけ声でかいんだよ。と内心舌打ちをする。
あー、ビックリした。っふと息をはいて視線が逸れてしまっていたスマホに再度視線をよこす
最近じゃぁ便利な時代になったものでスマホからでも漫画が読めるようになった。かく言う私も愛読者だ。けど、そのせいで通学中スマホをいじることが増えt「あの!!!」
また後ろから大声が聞こえて思わずスマホが手から滑り落ちそうになる
それに慌ててスマホをしっかり握り直す
早朝と言えどそれなりに人がいるので周りの迷惑も考えないその人物の顔を拝んでやろうとチラリと後ろを見る
そこにいたのはどでかい男子高校生でその視線は私の方へと向いており思わずすぐに顔の向きを元に戻す
え、何、超見られてる…!?
慌てて左右を確認する
「ああああああの!苗字、しゃん!」
すると背後から先ほどと同じ声が噛みながら私の名前を大音量で口にする
チラリともう一度後ろを見てみるとかぁああと顔を赤らめた男子高校生がいる
その視線はまっすぐ私を見つめており視線がかち合う
けれどそれに慌てて見てない振りをして前を向く
え、何々、誰なのこの人…!?!?
肩にかけていた鞄を抱いて記憶の引き出しを開けまくって後ろの男子高校生の顔に見覚えがないか思い出そうとする。
だけど、いくら考えても記憶にはなくて、ということは私と彼はは全くの初対面なはずで。
じゃぁ、何で話しかけてきた訳?ていうかなんで私の名前を知ってるの?わけわかんない…!
悶々と考え込んでいると存在を忘れかけていた音楽が途切れポロリと何かに引っ張られて耳からイヤホンがとれる
目でその先を辿ると彼が私から視線を反らさないまま私のイヤホンのコードを手にしており
すぐにっぱと手を離れて肩にかけるようにして音楽を聞いていたおかげでイヤホンは地面に着くことなく肩でぶらりと揺れる
イヤホンのコードを離れた手はっぐと強く拳を握る
顔を見上げると相変わらずこちらを凝視していてその顔は首まで真っ赤になっている
「あ、ああああの俺、烏野高校1年影山飛雄で、です」
なんとなく彼の強い眼光に目が反らせなくて見つめ返していると突然自己紹介される。
何だ、この展開。ていうかこの子なんで私の名前知ってるの。初対面なはずだけど、ていうか目が怖い
とりあえず、自己紹介をされたので体ごと彼の方へ向ける
「は、はぁ…初め、まして?」
「お、おお俺、ずっと苗字さんと同じ電車で!同じ車両に乗ってて!部活も卓球部で頑張ってるの知ってて!それで!あの!毎朝ずっと見てて!!それで!その!!」
突然若干血走った目で私の体を手を両手で掴んで来た影山飛雄にっぎょとして固まる
え!?何て言ってるか全然わかんないけど怖い!!
とにかく怖い!!
彼のそこそこ整った顔が気持ち悪いくらい赤くなっていて手も痛いらいに握られている
怖い怖い怖い!周りの光景が全く見えてないのかズイズイと迫ってくる彼にドア側へ後退って逃げる
もうすぐでおりる駅に到着するからそれを狙って逃げよう。
烏野高校っていったら私のおりる駅より少し後だったはず、さすがにそこまで追ってこないはず。
「それで!あの!あのぉおおおおお俺!」
「ちょ、ちょい待て。」
「…はっ!はい。」
「ちょっと、落ち着こうえっと、影山くん、だっけ。ここ電車の中だから。」
どうどうどうと興奮する彼をなだめてその際にっそと彼の手の中から抜け出す
ふぅ、と静かになった彼を見てみると何故か顔を真っ赤にさせて前のめりの体勢で胸を押さえていて慌てて「ちょ、どしたの!?」と声をかけるとギンッと鋭く睨みつけられる
え、何!?怖い…!!!
「な、名前…!!」
「あ!名前間違ってた!?」
「いや、あって…ますっ!」
はぁはぁはぁと荒い息でこちらを睨む影山くんにええー!怖い!と心の中で叫ぶ
するとちょうどプシューと電車が目的の駅に到着する
それでっほと胸に安堵が広がる よっしゃ、逃げるなら今だ。
影山くんは何故かまだ苦しそうに胸を押さえており若干心配だが、私から視線を反らさないあたり元気そうなので扉が閉まる瞬間に体を滑り込ませる
「じゃぁまた!」
「うぐぅっ…!!」
私がまた!と声をかけるとついに胸を押さえて踞ってしまった影山くん
それを横目に見ながら急いで改札へと向かう
改札を出た所で足を止めて胸に手を当ててため息を吐く
こ、怖かった。
ていうか気持ち悪かった……
できればもう会いたくない。
…………明日から乗る電車の時間変えよう
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