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「来てやったぞ。」


そう言って、やって来た彼の手には団子が握られている。

彼、佐吉様は、あれから薬草を摘みにちょくちょくやって来る。

……団子を持って。


私は、手伝っていた農作業を中断して彼の元に駆け寄る。


『こんにちは、また来たんですね。』
「来ては駄目なのか…」
『そういう訳じゃありませんよ。』


口を尖らせて言う彼に笑って答えて。

2人で縁側に並んで座って団子を食べる。


『今日はもう薬草は摘みましたか?』
「嫌、まだだ。」
『そうですか、なら後で一緒に摘みに行きましょうか。』
「…あぁ。」


彼は、実に可愛い人だ。

素直で、甘えたで

戦で怪我をした父親や兵たちと気遣って、こっちの方まで薬草を摘みに来ている。


『では、薬草を取りに行きましょうか。』
「…」


彼は、黙って私の後ろをついて歩く。

その姿は彼の特殊な前髪も相まって親鳥について歩くひな鳥にも見えなくもない。


そして、薬草を摘むと彼は何故かいつも、始めて私と出会ったあの場所に座りこむのだ。


『佐吉様、何故いつもここにとどまるのですか?』


そして、こうやって毎回同じ事を聞く。


「き、貴様には関係ない!!」


すると、彼は私から顔を反らしてしまう。
しかし、そんな彼の耳は赤い。

可愛い人だな、と笑いながらいつも彼の隣に私も座り込むのだ。





そういえば、何時この村を出るんだろう………


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