【少女とマルコ】

このまま崖から飛び降りたら
やっと自由になれる
悪魔の実を食べた自分は
海に入れば泳げない

猫の姿から人間に戻り海を見つめる

親が死に親戚に預けられたが
満足に食べ物も貰えず空腹で死にそうな時に
口にしてしまった果物が悪魔の実だった

まずい実を食べおえ気がつけば猫の姿
元に戻る時に近所の人に見られ
『化け猫!』とさらに殴られるようになったのだ

山に逃げ込み猫の姿で隠れていたが
ついに住処を見つけられた

このままだと殺される
自分達と違う人間をこの島では
受け入れてもらえない

他人に奪われるくらいなら
自ら命を断つ

12年生きたこの命はもう終わる

足を踏み出した瞬間
思い切り後ろへと引っ張られる

さっきまで誰もいなかったはずなのに
島の人間に見つかったのか

「何してんだよい!!」

聞いたことのない声に
声の主に目を向けると
見たことのない男性が
眉間にしわを寄せ腕を掴んでいた

「はな、して」

「お前、能力者だろい。
海に入ったら死ぬよい!」

「貴方に関係ないでしょ!」

腕を振り払おうとするが
掴まれている腕はびくともしない

「目の前でガキが死のうとしてんだ、
止めに入るに決まってるよい!!」

「うるさいっ!殺されるくらいなら
自分で死ぬ!!」

男は片眉をあげた

「この島の連中が探してるのはお前かよい」

はぁーと深いため息をついて
腕を離さないまま頭をかいく

「ここは親父の縄張りの島だ。
その島で人間を襲う化け猫が出るって言うから
おれが来たんだよい。
化け猫の正体がお前のようだねい。」

人を襲う化け猫と言われムッとした

「人なんか襲ってないっ」

「だろうねい。その様子だと逃げてるだけだろい。」

こくりと頷くと男はへらりと笑い
私の身体を軽々と抱き上げ背負うと
急に崖から飛び降りる

いきなりのことで声も出せずに
ぎゅっと目をつぶり首にしがみつく

「なら、おれと来い!親父に会わせてやるよい!」

海に落ちる衝撃がいつまでたってもこない

恐る恐る目を開けると広がるのは
どこまでも青い空と碧い海
人間の背中だと思っていた体は
青い炎に包まれている
熱くない美しい青い炎
いつの間にか自分は鳥の背中にいる

「貴方も能力者なの?」

「あぁ。おれは白ひげ海賊団1番隊隊長マルコだよい!
ここの島の連中は
能力者に免疫があんまりないんだねい。
化け猫だなんて笑っちまうよい。
お前の名前は?」

「アラタ」

「アラタ、少し散歩してやるよ」

そう言ってマルコは空から島を1周してくれた
この島の全体を見るのは初めてだった
島が全てだった私は空から見れば
そんなに大きくなかった事に驚いた

「お前がいた場所は
おれからしたら狭い箱の中にいたようなもんだよい。
おれと親父の元へいくかい?」

「うん、行く!いろんなモノがみたい!」

それが正直な気持ちだった

「決まりだよい!」

マルコは島へと向かい
見覚えるのある街へと降りると
鳥から人間の姿に戻る

私がいた場所だと気がつくと
思わず身体が強ばった
マルコさんは優しく背中を撫でてくれた

私達の姿に気がつくと
そこにいた人達が目を釣り上げ
近づいてくる

「そいつだ!そいつが化け猫だ!」
「殺せ!」

罵声が飛んでくる

「うるせェよい!!」

マルコの一言でその場が静まり返る

「こいつの命は白ひげ海賊団が預かる。
襲われたって言った奴はどいつだ?」

街の人間の視線は1組の男女に注がれた
それは預けられていた家の者だった

「ほ、本当に襲われたんだっ!」
「あぁ!そうだ!あたしゃ噛みつかた!」

日常的にいたぶられていたが
その日は木の棒で殴られ頭から血が出た
身の危険を感じて猫になり無我夢中で
抵抗して山へと逃げこんだのだ

その時の事を言っているのだろう

「そうかよい。こいつはただの子どもだ。
暴力をふるったあげく抵抗されただけだろい」

その言葉にぐっ、と言葉につまる夫婦をマルコは鼻で笑う

「この事は親父に報告するよい。
ただの少女を殺そうとしてたってねい。」

夫婦は顔面蒼白で震えだした

「用は済んだんだ。
おれは帰るよい。」

その言葉だけを残し振り返りもせずに
また私を背負い飛び立った

「船はすぐそこに停泊させてるから
すぐつくよい。」

「うん。...ありがとう」

自分を苦しめていたものは
あっけないほどちっぽけな事だった
島に未練などない


すぐにつくと言葉のとおり
すぐに船は見えた


船の大きさに言葉をなくす
想像していたものより何倍も大きかった

「おっきい・・・」

「兄弟がいっぱいいるからねい」

その言葉通り船に降り立つと
人、人、人で目が回りそうになる

その中でも存在感のある大きな男の人
近づくと見上げるほどに大きい

「親父、戻ったよい。
化け猫の正体はこいつだったよい。
悪魔の実の能力者。
人が襲われたなんてガセネタで
こいつは殺されそうになってたから
連れてきたよい。」

「グララララ!
そんな事だろうと思った。
オレが白ひげだ。
お前名前は?」

大きな手が頭を撫でる
「アラタです」

白ひげ海賊団聞いたことがあったが
海賊を見たのも初めてだった


「アラタ、いい名じゃねェか。
親はいるのか?」

「いない。死んじゃった。」

「グララララ!そうか!
なら、おれの娘になれ!
今日からおれがお前の父親だ!」


海賊の娘になるなんて
馬鹿なことできるわけがない!
他の人になら絶対そう言っていた

それでも大きく頷いたのは
親父さんについて行きたい
そう思ったからだ

こくりと大きく頷いた



◇◇◇

親父さんの娘になり6年が経った


「マールコ!何してんのー?」

大きな背中に飛びつくとこちらも見ずに
めんどくさそうな声が返ってくる

「海を眺めてるだけだよい。離れろい」

「離れないっ」

離れろ、離れないを繰り返す
それを見て昔から知ってる周りは笑う

「アラタ!いい女に成長したのに
そこはガキのまんまだな!」

野次を飛ばされるがベーっと舌を出す

「ふふ!いいの!マルコの背中は私のなの!」

「お前の、ものじゃねェよいっ!」

「きゃぁっ」

無理矢理引き剥がされ床へと投げ出される

「いたーい!」

「うるせェよい。
お前、今日は見張りだろい!さっさっと行け!」


「はいはーい!!またあとでね!!」

マルコに背を向け持ち場へと走る
頬がゆるんでいく


マルコを男として意識したのはいつなのかもう忘れた
島から連れ出してくれたあの日かもしれないし
もっと経ってからかもしれない

隣にいて安心するしドキドキもするのだ

いつかこの気持ちをマルコに伝える
そう心に決めて仕事に集中するために
頬をたたいた



アラタが走り去っていくのを眺めていると
サッチがニヤニヤしながら肘でつついてくる

「・・・なんだよい 」

「アラタに抱きつかれて
振り向かないのはそのだらしない顔を見せないためだろ」

「うるせェよい」

「さっさっと言っちまえよ。
じゃねェとほかの連中にとまれちまうぜ?」


「...わかってるよい」

この歳になって初恋なんて、本当に馬鹿げてる

猫から人間になった少女を見て釘付けになった

海に飛び込もうてしたアラタをとめたのは勢いだった
死にたがってる人間をわざわざ止めたりしない
気がついたら腕を掴んでいた

今考えると一目惚れだ

自分は12の子どもに恋をしたのだ
それに気づいた時は落ち込んだ
子どもが好きなのかと
でも他のガキを見ても何も思わなかった

アラタから目を奪われたのだ

何も信じていなかった少女は
モビーで仲間を信じることを覚えた

そしてサナギから美しい蝶へと成長したのだ

ずっと見てきた、守ってきたアラタを
誰にも渡すつもりはない

「そのうち伝えるよい」

呆れた顔でこちらを見るサッチを無視して
仕事をするために部屋へ戻った

マルコ×少女
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