気付いた時には手遅れで | ナノ






アイツってあんなに笑う奴だっけ?とか、意外と鍛えられている身体に驚いた、とか。


始まりは、そんな些細なこと。



定期的に行われる席替えで。

隣でもなければ前後でもない。“斜め後ろ”という何とも微妙なポジションに、あいつはやって来た。



「あ、エース。よろしくー、」

「おう、よろしくな」




一年時からクラスが一緒で、何の縁か高校生活三年目になる今も、同じ教室で過ごしている奴。





左は窓、右は休み時間もずっと本を読んでるような子。前に座る男子は女が嫌いで、後ろの名前は何だっけ?







「あたし、エースしか喋れる人いない」

「そりゃあ不運だな」





こんな風に笑う奴だっけ、とか、いつからこんなに仲良くなったんだっけ、とか。




「エース、変わったよね」

「何も変わってねぇよ?」

「嘘。もっと暗かった」

「俺らが話さなかっただけだろ」




言われてみれば。


同じ教室に居た。名前を知ってた。顔を知ってた。声を知ってた。ただそれだけだった一年時。






「何か勿体なかったわね、一年間」

「ハハ、それ何回も聞いた」

「うん。何度だって思うもの」






いつからこんなに笑い合うようになったんだっけ、とか。


きっかけは些細な些細な積み重ね。














「ナミ、ナミ、」

「なぁに?」

「コレ見ろよ、傑作!」

「ぶっ」




二限目、歴史の授業中。名前を呼ばれて振り向いた先、教科書に書かれたヘタクソな落書き。

机に肘をついて教科書を持つ彼は期待に満ちた顔をしているけど、でも。



言っちゃ悪いが、絵心無し。おまけに言うと字もヘタクソ。






「うん、すごく意外だわ。」




ひとしきり笑った後、目尻に溜まった涙を指で拭いながら素直な感想をエースへ。




「絵とか字とか、すごく上手そう」

「どういう意味だよ」

「そのまんまの意味よ」


「読めりゃいいんだよ、要は気合いの問題だ」

「ワケわかんない」

「ハハハ」





何がそんなにおかしいのか、とにかくエースはよく笑う。
さっきだって、私が笑えば私以上にエースが笑って。私が何で笑ったのか理由すらよく理解してないくせに。

私が呆れたように見詰めても、目尻をグッと下げて本当に楽しそうに笑うから、釣られて私も笑って。




「そこ二人うるさいぞー」なんて先生が怒るのも当たり前。


「はーい」
「すいませーん」


そしてまた目を合わせて笑って。


“お前のせいで怒られた”
“馬鹿言わないで、あんたのせいよ”







こんなことを“嬉しい”と感じるなんて、もしかして。

あー、ほんと、勘弁してよ。結構やばい、かもしれない。
















時刻は変わって四限目。



ただ今、自習真っ最中。
立ち歩くことは無くとも、真面目に自習してる生徒なんてほんの人握りで。


休み時間のような活気を持つ教室の中、斜め後ろに座るエースに話しかけると怒られた。






「授業中だぞ、前向けよ」

「あんたにだけは言われたくない」



寝てるか喋るか、寝てるか。暇さえあれば(授業に暇など無いのだけど)寝ているコイツ。


「寝る子は育つって言うだろ、成長期は寝とけばいいんだよ」

「私と喋ってる時以外、殆ど寝てるじゃない」

「お前と喋ってる時だけ起きてるからな」

「何それ、」

「まあ喜んどけ」





「俺は寝る」そう言って机に突っ伏したエースを見届けた三分後。

やっぱりどうにも暇で、懲りずにエースに話しかける。



「ねぇ、」


「、何だよ」

「ひま。」

「何してぇ?」

「お腹すいた」

「弁当食うか?」






何と言うか。

こういうところがすき、なのかも。
私のわがままにとことん付き合ってくれるとことか。
やっぱりかわいい笑顔とか。

そう言えば、寝てるエースに話しかけても無視されたことってない。一つ、嬉しい発見。










「やばいかも、私。」



一つ、二つ、三つ、集まり過ぎた“きっかけ”は、何と呼べばいいんだろう?

















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友達以上恋人未満エーナミ(^^)

ありきたりな学生生活を小説に!という意見を頂いたので、ほんっとーに些細な恋愛とも言えないような、そんな話をエーナミで(^q^)

学生ならではの『あの二人付き合ってるんじゃないの?』的な関係←




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