猫の正しい躾方 | ナノ



「ありえない‥」




思わず零れた私の本音。わざとらしく溜め息を零してみたって、この男は何ら反応を示さない。


久しぶりだっていうのに、何なんだろうこの扱いは。


とてつもない敗北感。まさかこの私が本に負けるなんて思ってもいなかった。やり場のないこの感情は、怒りを通り越してもはや呆れ。色んな期待を胸にこの部屋に来たというのに。





二人きりのこの部屋で、ローは椅子に座って本を読んでいる。広げた足の片膝に私を座らせ、私の腰をがっしりと腕を回して。背中に、腹部に、ローと触れ合っている全ての部分から、ローの温もりを感じるのに。





それなのに意識は本へしか向いてないなんて、ありえないじゃない?




腰に回された腕でしっかりと彼の膝に固定された私は、動けない、つまりは行動を制限されているわけで。



この部屋に入った私を「こっちに来い」と手招きした仕種にどれだけ心臓が早くなったかも知らないで、この男は意図が見えない行動で私を振り回す。

そりゃあ、彼が本を読んでいると分かって部屋に入った私だから。単なるわがままかもしれないけど。





「本なんていつでも読めるじゃない」「私を構いなさいよ」素直じゃない私は、そんなこと言葉にできないんだから。


あんたが気付いてよ、ばか。







非難の色を込めた瞳を向けてみたって、ローの視線は本から逸れない。

仕方なく私も本へと視線を向け、器用に片手だけで本をめくる手を見つめた。そこでふと気付く。


色気。





骨張った細長く白い綺麗な指。わずかに浮き上がった血管に、七分丈のTシャツからはみ出した腕に見える筋肉の筋。

ぞっとした。

刻まれた“DEATH”という刺繍でさえ美しい。





「 どうした?」


様子の変わった私に気付いたであろうローの視線が、私へと向けられる。

待ちわびた視線のはずなのに、そんなことはどうでも良かった。





「気にしないでいいわ」



ローの手から本を抜き取り、そのまま机へ。意味が解らないといった顔のローを気にすることなく、ローの手を取りその刺繍に口づけた。軽く噛み、そして舐める。




一瞬驚いたような顔をしたローだったが、その顔はすぐに満足気な笑みへと変わった。



「寂しかったか?」




向けられる強気な笑みに、私が私じゃなくなったかのように調子が狂う。悔しいけど、ほんと悔しいけど、こいつには敵わない。


私を見つめる瞳に、愛しさが篭められていることが、痛いくらいに伝わってくるから。






「そんなこと言ってる暇があるなら、早く抱きしめなさいよ」










ローの膝に座らされたまま、体を横へと向かされる。


ぎゅうっと腰と頭を強く引き寄せられ、耳元で私に問う声。

「寂しかったか?」


本日二度目となる問いに、ふふっと笑みが零れる。「全然」と答えた私の声には笑みが混ざって、「素直じゃねぇな」とローも笑った。




「私を試すなんて、いい度胸してるじゃない」


「何の話か解らねぇな」


「ふざけんじゃないわよ、本に負けるなんて屈辱、初めてよ」



睨むようにローを見上げると可笑しそうにくっくっと笑うローと目が合った。膝に座っている分、いつもより近い距離。




「悪かった」



未だに声に笑いを含んだまま耳元で囁かれ、頬に暖かい感触。続いて手を取られ、私がしたのと同じように軽く噛まれ舐められた。


もどかしく恥ずかしい感触に頬が赤くなるのを隠すように、ローの首に腕を回す。







「次はどこにキスされたい?」



抱き着いてるから顔は見えないけど、きっと彼は今、悪戯っ子のような質の悪い笑顔を浮かべているんだろう。私の顔が赤いのもきっとこの男は分かっていて、私が問いに答えないことも彼は全てお見通し。

全く、敵わない。それでも負けっぱなしなんて私らしくないじゃない?


たまにはあんたが焦りなさいよ。




ローの首に腕を絡めたまま、身体だけを離してローを見つめる。顔が真っ赤なのは自分でも自覚してる。これは、私からの挑発。あんたも私の一挙一動に狼狽して見せてよ。









「‥もっと、足りない。ちゃんとキスして。頬っぺや指じゃ、満足できない」



あ、やばい、恥ずかしい。


「‥ロー?」


どれほど驚いたのか、口を半開きにして固まった様子のローを見れただけで私は満足だ。頬はいつもより赤い気がするし、うん、大満足。



だったのに



「きゃっ!ちょ、ロー!?」


いきなりの浮遊感。慌ててローの首にしがみつく。いわゆるお姫様抱っこというやつで私を抱き抱えたローの顔は、今まで見たこともないくらい真っ赤。私の視線に気付いたローは「‥っ、見んな」と言って私の唇にキスをした。向かう先はベッド。



「覚悟しろよ」






これからされるであろうローの反撃を想像して、私は自分の挑発を死ぬほど後悔した。








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ついに手を出してしまったローナミ\(^O^)/



ローさんは絶対、ドSだと思うんだ。ナミさんをいじめて楽しむんだ。「寂しい」とか言わせたいんだ。

でも女王気質のナミはなかなか言わないんだ。そんなナミが可愛くて更に溢れるS心。



そんなナミさんがたまに素直になろうものならば。


いつも余裕なローさんは1oの余裕もなくなります。うぎゃ!焦るローさんに萌える。



そしてこの後は散々いじめられるナミさん。「満足したいんだろう?」とか言われるんだよ。はぁはぁ




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