2 | ナノ



「馬鹿、」










そう言って、君は泣いた。
















そして綺麗に、微笑んだ。


















【ココ、終着駅・後】



















少しだけ、二週間前よりも痩せたように見える彼女は、やはり強気な様子で。


大きな瞳に涙を溜めて、キッと俺を睨んでいた。







「どういうつもり?」




正直、会った後のことなど何も考えはいなくて。

自分の気持ちに未だ戸惑っている俺が、ナミさんの質問に答えられるだけの余裕なんてあるわけなくて。








「他の女の子のことも、こうやって繋ぎ止めてるの?」


「っ、」




“違う”と。

そう伝えたいのに、俺の言葉は信憑性が無さすぎて。


どうすれば、彼女に伝わるだろう。どうすれば、ハッキリとした言葉が見つかるだろう。どうすれば、満たされるだろう。


彼女は俺を、救ってくれるだろうか。




否、“彼女しか”、俺を救えない。









「ごめん、ごめん、ナミさん、ごめん」


「‥何で謝るの?」



「ありがとう、今まで、たくさん、ありがとう、」


「‥サンジくん?」







抱きしめた腕から、想いが伝わりますように。沢山の意味を持つ「ごめんなさい」と、出会ってくれて「ありがとう」。










「ナミさんじゃなきゃ、ダメなんだ、」



ナミさんをぎゅっと抱きしめて、ナミさんの肩に額を預けて、涙を流す俺は、今最高に格好悪い。





らしくない、と自分でも驚くほど。それほどに、もうナミさんを離したくない。










「信じられる、わけ、無いじゃない‥」

「うん、ごめん。それでもナミさんが好きだ」


「いっぱい、傷付いたし、沢山、泣いたわ」

「もう絶対辛い涙は流させない、約束する」



「信じて、いいの?」



怖い、怖い、怖い。

“信じる”という行為に、得るものなど何もないと。
そう思って生きてきた。


ある人はソレを『利口だ』と言ったし、またある人はソレを『可哀相だ』と言った。




“信じる”という行為に得るものがあるとすれば。












「こんな俺を、信じてくれる?」


「信じさせてよ、時間をかけてもいいから」






ナミさんと、見付けたいんだ。











「サンジくんが泣いてる‥、」

「ナミさんだって泣いてるよ」

「私はいいのよ、女の子だから」

「なにそれ、理由になってない」




顔を見合わせて笑って、こんなことで、何だか温かい気持ちになる。


“大事なモノは失ってから気付く”なんて、あまりにも聞き慣れていて、あまりにも馬鹿馬鹿しくて。










「俺ね、“本気”になるの、怖かったんだ」



君は笑う?呆れる?

それとも、怒る?








「馬鹿ね、」



そう言って、君はまた一筋、涙を流した。







「もっと先に言ってよ」


そして綺麗に、微笑んだ。






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