ラフラン | ナノ



「あっ!!!!!!!」



突如響いた船長の声。

焦りの色が混ざったその大きな声に、読書へと意識を集中させていた考古学者も流石に驚いたらしく、本へと向けていた視線を船長へとずらす。





何か起きたのかと船長の方に目を向けて、あぁなるほど、と納得する。










彼の視線の先には、我らが有能な航海士。













【Ruf-Ran】




















『航海士を泣かすな』



いつの日だったか、規則性など皆無だと思っていたこの船に、暗黙の了解があることを知った。




それは誰かに言われた訳でもなければ、聞いて確かめた訳でもない。

それでも分かってしまうのは、長年培った洞察力の賜物とでも言うべきか。









「さて、何が起きるのかしら‥」












ふふっ、とそれはそれは楽しそうに微笑む彼女の視線の先。

今、推測が核心へと変わろうとしていた。














***








「ウソップ!!ゾロ!!!」

声が届いたと同時に、目の前に船長が飛んできた。







「お前らナミに何してんだ!!」







文字通り“飛んできた”こいつに、今更驚くようなことはしないが、理解できないのはその台詞。




「何って、」



『何言ってんだルフィ』、その言葉は出て来なかった。


目を向けたナミの瞳に、存在色濃く光る雫を見てしまった。

一瞬にして全てを悟る。


大方、あくびでもして溜まった涙だろうが、目の前で不機嫌なオーラもそのままにこちらを睨むルフィを見て、出る言葉はひどく情けないもので。



「ル、ルフィ!ち、ちち、違ぇんだ!話を!話をしようじゃないか!な!?」




宝物だという麦わら帽子をやや乱暴にナミの頭へと被せ、「下がってろ」とナミの腕を引くルフィは、それはそれは格好良い。

ナミも今ときめいたんだろうな、と頭の片隅で思うも、今はそんなこと考えている場合ではなくて。






「ゾロ!このばかに何か言ってくれ!俺様の言葉なんか聞こえねぇ域に達してる!!」




この時の、ゾロの寝顔を俺様は一生忘れない。






























「いやー、ウソップ、ごめんな!だっはっはっ」


結局、ナミがルフィを止めたのは、俺様が宙を舞った後だった。


目の前には“船医の顔”したチョッパーが、ぐるぐると俺様の腕に包帯を巻いている。







その横でこの包帯の原因ともなった男は。


「ナミ、目うるうるさせてっからいじわるされたのかと思ったんだ!」







あぁ、いいさ。もういいさ。分かってたんだ、この船長が“こういう男”だったってことくらい。


普段はばかみたいに脳天気なこの男を、怒らせない為には、航海士の平和が必要不可欠ってことくらい。










「お前が泣かせちゃ、世話ねぇんじゃねぇのか?」


「んん、大丈夫だ!ナミが嫌がることは、おれきらいだ!」


「ま、お前らなら心配ねぇか」




ルフィがナミを泣かす訳ねぇ。それはこの船の誰もが分かりきっていること。
















「あ、でも夜は泣かしちまうな。うるうるしながら『はやく入「チョッパーは聞くなぁああぁあ!!!!!」





前言撤回。

ナミもいろいろ、大変そうだ。




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