椅子取りゲーム | ナノ




「いいかお前ら、抜け駆けは禁止だからな!」


「おいサンジー、ぬけがけって何だ?」


「お、何やら楽しそうな話してんじゃねぇか。俺も入れてくれ」


「エースー!」




「だぁああぁぁあ、とりあえず!俺が合図するまで誰もナミさんに近づくな!触れるな!話かけるな!分かったか!?」




















【椅子取りゲーム】


























外は快晴、時刻は気分浮き立つ放課後。

皆がざわめき出す中、教室の隅では男が五人、変な緊張感を漂わせていた。








ルフィ、ゾロ、サンジ、ウソップ。彼等は幼い頃から一緒にいる、つまりは幼馴染である。それに加えてルフィの兄であるエース。

彼等五人は、皆一様にある一人の女性に恋焦がれていたりする。





「誰がナミさんに最もふさわしいのか、今日こそハッキリさせようじゃねぇか!」






“ナミ”。

彼女こそが、彼等の幼馴染であって、彼等の想い人でもある女。





幼い頃から長々と続くナミ争奪戦に、そろそろ決着を付けようと言い出したのはサンジだった。


自分達の気持ちに気付かず、こんなにも自分達の心をかき乱す彼女に。
皆の想いを知ってもらうべく、そして選んでもらうべく。




決戦は、今から一時間後。

















「あー、これでやっとナミも俺のモンになんのか」


当たり前のように言ってのけるエースに、いち早く噛み付いたのは弟であるルフィだった。



「ばかなこと言ってんなエース!ナミはおれのこと好きに決まってんだろ!」

「こればかりは譲れねぇな、ルフィ。兄ちゃんにはな、お前と違って“大人の魅力”があんだよ。お前みたいなガキがナミに釣り合うもんか」


「おとなのミリョク・・?そんなの肉には勝てねぇだろ!」

「お前は何でそう食い物のことしか頭にねぇんだ・・、ガキの頃から〜・・」







いつの間にか論点のズレた兄弟喧嘩。

この兄弟の言い合いなど、仲の良い戯れのようなもの。



未だ言い合う兄弟を背に、サンジは目の前の敵を見据えた。


ここは学校で、生徒が集う教室だと言うのに煙草を咥える彼は、その煙草でビシっとある男を指した。


煙草の先に居るのは、長い鼻が特徴的な、





「問題はお前なんだよなぁ、ウソップ。」

「ひぃいぃ!何で俺!!!」






誰よりも驚いたのはウソップ本人である。

それもそのはず。彼は日頃から出すぎたマネはせず、彼等の反感を買うような行為は一切行ってはいないのだから。



自分が彼等の怒りを買ったところで、化け物じみた強さを持つ彼等にボコボコにされるのがオチである。

そんな結末が目に見えている彼は、日頃から静かに、静かに。

荒れた荒野に咲く一輪の薔薇のごとく静かに、美しく、そして気高く、日常を過ごしていたつもりだった。




「お前はよく口が回るからな、話術でナミさんをどうにかしようって考えてんじゃねぇだろうな、あぁ?」


蛇に睨まれた蛙とは、まさにこのこと。





「すすすすいません!」


しっかり45度。ビシっと効果音が付きそうな程キレイに腰を曲げ、彼は謝るしかなかった。




もはや滝のような汗を流しビクビクと怯えるウソップに、サンジは更なる追い討ちをかける。


「人と違う鼻を持ってるからってナミさんまで手に入ると思ったら大間違いだぞ!天使のような美しさを持つナミさんにふさわしいのは、プリンスのようなこの俺だと決まってるんだよ!!」












「馬鹿ばっかりだな・・」


唯一まともなゾロの呟きは、他の四人には届かない。






兄弟のくだらない言い争いは、いつの間にか今日の夕飯は肉だの魚だの。


サンジとウソップのくだらない茶番は、いつの間にかサンジのデートの予行演習へと変わっていた。ウソップが演じるナミの姿が、なんとも気持ち悪い。





今みた光景は、夢だ。そうだ、夢の延長だったのだ。

目が覚めたゾロの視界に飛び込んだなんとも面倒臭い状況に、ゾロは見なかったフリを決め込んで再び夢の中へと意識を預けた。
















「何やってんの、あんた達。」



「「「「ナミ(さん)!」」」」





地獄に仏ならぬ、地獄に女神。




思いがけない彼女の登場に、場の空気は一気に真剣なものへと変わった。

サンジが目で皆に合図を配る。




(お前ら、準備はいいか?)






ついに決着をつける時。


いざ愛しの彼女へ―・・







「ちょっとゾロ、寝てるの?迎えに来たわよ!」


「あぁ、悪ぃ、寝てた」


「ったくしょーがないわね!ほら、鞄持って!」











「えーと、ナミさん?」

果たしてどういうことなのか。




「ゾロくーん?」


どうして目の前のこの緑の頭した物体と、天使のようなナミさんが。







「君タチ、何でそんな恋人みたいな雰囲気醸し出してるの?」



「何でってそりゃあ、恋人だから?」


















その翌日、ゾロが一日中くだらなすぎる嫌がらせに遭ったことは言うまでもない。












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