恋の恩返し | ナノ



「ベタベタしないでよ」とか、「よく恥ずかしげもなくそんなこと言えるわね」とか。



口から出るのは、いつも幸せすぎる文句で。可愛くない台詞だけどあんたはいつも素直な笑顔で笑ってくれるから。









私もたまには、素直になりたいな、って。そう思うのよ。



















【恋の恩返し】





















乙女心は複雑だ、と最近身に染みて実感する。口では「やめて」と言っていても、実際にやめられると不安になってしまうのだから、厄介以外の何物でもない。

それでも「やめて」と言う言葉の8割は本心なのだから、結局私は彼にどうしてほしいのだろう。









「お前おれにどうしろって言ってんだ?」

「私もよく解らないわ」




ここは学校で。いつものように人目を気にせず抱き着いてきたルフィに私の考えを伝えたところ、ルフィからの質問。私の答えは、私の正直な気持ち。

だってほんとに、解らない。



今この腕を離されたら寂しいと思うし、明日からこの過剰なスキンシップが“言葉だけ”のスキンシップに変わるとしたら。そんなの、不安でたまらない。

だからと言って、皆の視線が全く気にならないという訳ではなくて、恥ずかしさも十分ある訳で。



だから言うのだ。


「恥ずかしいからやめて」と。





「お前なー、そこにナミがいるのに触らないなんて無理に決まってんだろ」




こいつの“こういう発言”に、クラスの皆は随分と慣れたご様子で。唯一慣れてないのは、私だけ。


あたかも当たり前だと言うように真面目な顔して言うもんだから、私はまた“幸せな文句”を言ってしまう。



全ては、素直じゃない私の照れ隠しだと。分かっているルフィは顔を真っ赤にして怒る私を見て嬉しそうに笑うんだ。





「おれはナミに触りたいから触る。ちゅーしたいからちゅーする。ナミは照れ屋だから自分から“したい”って言えねぇだろ?」






「おれがナミの分もするから、それで丁度良いんだ!」






ここは学校で。いつも授業を受ける教室で。勿論、クラスメートが沢山いる訳で。そんな場所で、ルフィの背中に手を回した私も、随分とどうかしてる。


だってしょうがないじゃない?堪らなく愛しいと思っちゃったんだから。







背中に回った私の腕に気付いて、ルフィは嬉しそうに笑う。私の肩に顎を置いて、「しやわせだー、おれ、なははっ」と言うルフィに、“こんなに喜んでくれるなら”とこっちまで嬉しくなる。




「ナミー、すきだー」


「知ってる」




あー、だとかうー、だとか唸っているこの男は、今この“しやわせ”をしっかりと噛み締めているのだろう。

いつものお返しに、私からも沢山の幸せをあげる。





「私も、好きよ」


「‥え、」


「一回しか言わないからね」



「え、ちょ、ナミ!もっかい!」





あんたと一緒にしないでよ。あんな恥ずかしい台詞、何回も言える訳ないじゃない。


「ナミぃ〜」と涙目に上目遣い。ちょっと、それは反則。本当に私はルフィに甘いなぁ、なんて思いながらも、結局はもう一度言ってしまう。本当に小声だけど。






今日のルフィは上機嫌(こいつはいつだって上機嫌だけど)。私もとっても上機嫌。


額にキスをくれるルフィを止めることなく、今日はルフィの唇を受け入れている。頬にちゅっという音が響いた頃には、クラスメートもいつもとは違う展開に戸惑っていたことだろう。



「ルフィ、ストップ」




唇が重なる一歩手前。ここが学校だとか、そんなことはこの際どうでもいいとして、忘れちゃいけないのは皆が見ているということ。




ほら、もうチャイムもなる時間だし。何より、キスを見られるなんてやっぱり恥ずかしい。





納得いかないといった様子のルフィと、片やとっても上機嫌な私。

いつもあんたから貰ってる幸せ。私もいっぱい返したいから、今日はまだまだサービスしてあげる。ルフィの耳元で囁いた“しやわせの約束”。




















“続きは放課後、ね?”








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