2 | ナノ













男は確かに強かった。











【君の元・後】






ヒモヒモの実。


自身から出る幾多もの紐で、敵を捕えて締め上げる。




身体の自由を奪われるのだから、本当に質が悪い。







己の懸賞金が上がると言うことは、こういうこと。



より強い賞金稼ぎや海兵に狙われるということ。









「サンジくん!!ウソップ!!」







そんな中、忘れちゃいけないのは私達の戦闘レベルの違いで。



賞金首になって間もない私やウソップが、いきなりルフィやゾロみたいな億超えを相手にするような賞金稼ぎと戦うなんて、馬鹿げている。








サンジくんの足が、ウソップの手が、縛られる。






留めの一撃、ナイフが光る。

間一髪、ディアンの元へ飛んでいくルフィのパンチ。




その間にゾロが二人を解放し、勝負はまた、振り出しへ。






「サンジ!!!ウソップとナミ連れて戻れ!」





突如響く船長の言葉に、一番驚いたのはサンジくんだろう。




「おいルフィ!どういうつもりだ!この状況だぞ!?」




私だってサンジくんに同感だ。



そりゃ逃げれるにこしたこと無いが、それは皆助かってこその話。




傷だらけのルフィとゾロを前に、誰が逃げれるだろう。



戦力は多い方が良いに決まってる。






「サンジ!ウソップとナミはお前が守れ!ここは俺達に任せろ」




そう言うルフィの顔は、完璧に船長の顔、ルフィの意思は揺るがない。





「なんだ、不安か?クソコック」




「ンな訳あるか、マリモ野郎」




「おいおい!お前等二人で大丈夫かよ!?今でも十分押されてんじゃねぇか!」


「おい、行くぞウソップ」







抗議するウソップの横で、私は何も言えなかった。



何を言ってもうちのキャプテンはきっと聞く耳を持たないだろうから。






「ルフィ、ゾロ、船で待ってる」






「ししっ!分かった!」

「あぁ、大人しく待ってろ」





「魔女が‥」と呟くウソップの背中を叩いて、サンジくんの元へ。



私が待ってると言えば、素直なあいつらはきっと私の元へ帰って来る。



一番効果的であろう言葉を残して、私達はその場を後にした。







「ほほぅ、たった二人で俺に挑むか。死に目を女に見られたくない男のプライドか?」


「‥死ぬのはてめぇだ。あいつが待ってる、さっさと終わらせるぞ」

「あぁ!いくぞ、ゾロ!」














***












もう皆戻って来てたのだろう。




船に戻った私達を見るなり他のクルーはただならぬ雰囲気を感じ取ったようだ。



ウソップが先程までの事態を説明する。


ロビンはやはりその名を知っていたようで「心配ね」と呟く。



私はと言えば、口ではあぁ言ったものの二人が気になってしょうがない。

自分達が帰って来たばかりの街を眺め、二人の影を探す。







「ナミさん、」



いつから居たのだろう。




背後から声を掛けられハッとする。




「サンジくん、と、ウソップ‥」



「あいつらが心配?」





(そんなの決まってんじゃない‥)



「そりゃあ心配、に決まってるでしょ!あのディアン・マースよ!?あんた達だってあいつの強さ体感したじゃない!それなのにあいつら「ナミ、お前が“待ってる”って言ったんだろ?」




やけに冷静なウソップの声に、言葉が詰まる。




「お前があいつらに“帰って来なくちゃならねぇ理由”を与えたんだ。あいつらは帰って来る」




「そうだよナミさん。ルフィとゾロが、ナミさんとの約束破る訳無ぇ。勿論、俺もね」



分かってる。

自分もそのつもりで“その言葉”を残したのだ。




皆の夢や野望のように、私があいつらの“鎖”になれば良い。

生きなければいけない理由になってしまえば良い。




泣かせたくないんでしょう?



私の笑顔くらい守ってみせなさいよ。






「そうね、あいつらが私を置いて死ねる訳ないものあいつらが帰って来たら忙しいわよ、今日は宴らしいから?」





いつもの私の挑戦的な笑みに安堵したのか、サンジくんとウソップも笑顔になる。



「よっしゃ、ご馳走でも作るか!」













***







全く呆れた。


あれだけ心配させといて。





帰って来た第一声が「宴の準備まだか?」だったのだから。





血だらけで帰って来たくせに。


傷だらけのくせに。



こっちの気も知らないで、何であんたはそんなに笑顔なのよ。



「おー、やっと帰って来たか。料理はもうちょっと待ってろ。先に手当てしてもらえ。」



「お!ルフィとゾロでよく船まで帰って来れたな!」





「ししっ途中で何回もゾロ消えんだ!全くゾロの迷子には困るよなー」


「てめぇが腕伸ばして飛んでくからだろーが!」



いつも通りの会話。

ただ違うのは、ルフィやゾロの怪我だけ。





「あ!ナミ!!」




私を見つけるなり、笑顔で駆け寄って来た男は、何で“こう”なんだろう。


「ナミ!待ったか?」




心配かけてごめんな、とか言うことは他にもいろいろあると思う。


別に謝ってほしい訳じゃないけれど、満面の笑みで話しかけてほしい気分でも無い。


そんな私の心の中なんてこいつらに分かる筈も無く、ルフィの後ろからはウソップとサンジくんの優しい視線。




ルフィの隣にやって来たゾロが、口を開く。



「お前は待ってるって言った。そして俺達は帰って来た。お前は俺達に何か言うことがあるんじゃねぇのか。」






そうね、言いたいことは沢山あるけど一先ず。

約束を守ったこいつらに、私はご褒美をあげなくちゃ。


次もまた、ちゃんと帰って来る為にはそれなりの報酬が必要でしょう?













満面の笑みで。















「お帰り」














私の元へ。








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