こんな役割も悪くない | ナノ





「何よ、ゾロ」




「あ?」







「あんた、ずっと何か言いたそう。」









【こんな役割も悪くない】













この女は頭が良いくせに、時々その頭を使わない。



つい先日まで、シキの船の航海士になると言っていたのだ、言いたいことなら山ほどあるに決まってる。


それに加え、今回は命に関わるような危険な行動も多かった。

言いたい事なら有りすぎるくらいだ。




もっとも、俺が言わなくても看病を受けた際チョッパーから命の危険についてキツく言われただろうし、音貝を聞いてご立腹船長にも散々いろいろ言われたんだろうけど。




(俺が言うまでもねぇ‥か)



ふと、思い出される船長の顔。





そう言えば、俺はこの女に言わなければならない事がある。





「ナミ、お前よぉ、、」

「何?」





ベッドに横たわるナミを見つめて、俺にとっては大事な本題。







「あいつの名前ばっか呼び過ぎだバカ」








「は?あいつ?」




「ルフィ、ルフィってしつけぇったらねぇ。」


「あら、あんた妬いたの?」




こっちは至って大真面目だと言うのに、小馬鹿にしたようなナミの笑顔が癪に触る。




「‥少しは俺の名前も呼びやがれってんだ、」



「‥やけに素直じゃない。どうしたの?」




シキに負けて目が覚めたらお前がいなかったんだ、そりゃあビビるだろ。




そんなこと言えるはずない俺は、黙ったまま。



沈黙を破ったのはナミ。





「ゾロ、ちょっとソレ貸して」



ベッドから半身を起こしたナミがこちらを指差してそう言う。



「あ?ドレだよ」


「あんたの着てるやつ。こんな汚れたワンピースで休める訳ないじゃない。あんたのまだキレイそうだし。」





思えば、こんなナミの我が儘を聞くのも久しぶりだ。


「早く脱ぎなさいよ」



どうやら、だいぶ元気が出て来たらしい。

いつもの、強気なナミの顔。


「ほらよ」

「ん、ありがと」





手渡して、背を向ける。

この女はきっと、俺の目の前でも堂々と着替え始めるだろうから。

ふと借金を追加する楽しそうなナミの顔が頭に浮かんで、思わず苦笑が漏れる。



もう着替え終わったかとナミに視線を戻せば、同時にナミが口を開いた。



「ねぇ、ゾロ?」

「何だ」

「私は大丈夫よ。もうこの船から離れない。助けに来てくれてありがと」



そこで気付く。

俺達以上に、一人になったナミの方が何倍も不安だったに決まってる。


いくら強がっていても、誰よりも不安で、怖かったに違いない。




「あぁ、一人にさせて、悪かった。」



「ううん、助けにきてくれて嬉しかった。それとね、」

「?」


「さっきの話だけど、声に出して呼んでたのはルフィの名前ばっかりだけど、その分、心の中で一番に名前を呼んだのはあんたよ?」


「なっ!///」



「これであんたの機嫌も直るかしら?v」



「‥っとに、調子の良い女だよ、てめぇは」


「ふふふっ」




まったく、困ったもんだ、この魔女には。



いや、もっと困ったのは俺か?


重症だ。

こんな会話でさえ心地好いと思っちまってるんだから。




***








そう言えば、先陣切って戦いに行ったオレンジ色の魔女に、言い残したことが一つ。




どうにも恥ずかしいから、これだけは心の中で。
















“おかえり、ナミ”




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