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目の前には、黒い着物を着た男。


腰には刀。

奴は自身を“死神”だと言う。







細い目に、銀色の髪。










どう見たって、幼い頃に死んだはずの幼馴染がそこに居た。


















***















声も、笑顔も、雰囲気も。
何もかもがギンそのものだった。


「迎えに来たで、乱菊」





嘘だ、夢だ、有り得ない。








だってそうに決まってる、
幼い頃死んだ筈の幼馴染は、生きて成長を続けてきた私と変わらぬ年相応の姿で私の前に現れた。

その上、「死神になったんや」なんて。






「‥‥ったく、質の悪い夢。」


背中に感じる冷や汗も、乱れる脈拍も、全てが現実的すぎるのに。

どうしても、目の前の存在だけが現実味から掛け離れていた。





「夢やない、現実や。」


頬に伸ばされた手はやけに冷たくて、ぞくりと鳥肌が立つ。

ニコリというよりは、ニヤリ。
自称死神の怪しい笑みに、背中に伝う冷や汗。







夢、幻、はたまた妄想?

こんな現実、有り得ない。




( ほんと、質の悪い夢だわ‥、)








今日は13日の金曜日。

『何か良くない事が起きる』と、人々が嫌遠してきた今日この日。







女の名前は松本乱菊。

本日、死んだ筈の幼なじみが死神となって現れました。









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