明日が来ない夜 | ナノ



ひらり、蝶が舞う。

ふわり、華開く。




どきん、恋心。








ちくり、胸痛む。













明日が来ない夜

















「乱菊の髪はほんま綺麗やね」

「ちょっと、いい加減くすぐったいんだけど。」


「ほんま、お日さんみたいや」




やわやわと髪を摘んで、そっと毛先に口づける。

普段は狐だとか蛇だとか言われているくせに、目を細めて彼曰くお日様のような金色の髪に顔を埋めるその姿はまるで─





「 猫みたい 。」

「?」

「何か今日のアンタ、猫みたい。やけに甘えたがりじゃない?」


「何言うてんの乱菊。猫みたいなんは乱菊やろ?それに、たまにはええやん、ボクかて甘たい時くらいあるんよ」





毛先にちゅっと口づけてから、腰をぎゅっと引き寄せて首筋に顔を埋める。

どうしたんだろう、今日の彼は本当に甘えたがりだ。





「なぁ、乱菊。痕付けてもええ?」

「ダーメ、死覇装じゃ隠せないじゃない。うちの隊長さんには刺激が強すぎるわ。」

「なんや、イケズやなァ」



わざとらしく落ち込んだような声色。
本当に落ち込んでいるのか否か、表情からは読み取れない。

いつまで経っても、どれだけ一緒にいても、この男の奥底の本音が分からない。





「ここならえぇやろ?」




ちゅっと唇が触れたのは、首の裏側。項に近いその部分。


「乱菊いつも髪下ろしてるやん。ここなら誰も見ぃひんよ。」



ちくりと、僅かな痛みが走った。

この男が何を思って痕を付けたいと言ったのか。
身体を求めるでもなく、何故ただぎゅっと抱きしめるだけなのか。
髪に顔を埋めて目を細めて匂いを胸いっぱいに吸い込んで、
そんな、いつもはしないような仕種がどうしようもなく切ない。





(これで最後、って言われてるみたいじゃないの。)








ちくりと走った痛みが愛しい。
自分の腰を抱く体温が愛しい。
周りが何と言おうと、自分にだけ見せる自然な表情が愛しい。



どうしようもなく締め付けられる心臓は仕様がない。
せめて涙は出ないようにと、強く唇を噛んでみた。




「ギン、アンタの悪い癖よ」

「?」

「いつもいきなり消える癖。行き先くらい言って行きなさいよ。」

「 小っさい頃の話やろ?今更してどないするん?」




形のいい眉が寄せられ、綺麗な顔が複雑に歪んだ。



ボクはもう何処にも行かへんよ、そう言えばこの猫は瞳いっぱいに溜まった涙を安堵の涙に変えてくれるだろうか。




(そないな約束は、できへん)







「乱菊は心配性やなァ。そないな顔したらせっかくの別嬪さんが台なしやで?」

「ちょ、あたしは真面目にっ「乱、ちゅうしようや」





ぎゅうっと締め付けられる心臓も、熱くなる目頭も、早くなる鼓動も。

全てを無視して、目の前の愛しい存在を抱きしめた。








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