一番に君に会いたい | ナノ


過去に未だに囚われてるなんて、我ながら馬鹿だとは思うけど、



それでも。

















例えば“夢”とか、


不可抗力だと思わない?






















一番に君に会いたい























大切な人の血、守りたい人達の涙、殺したい程憎い奴の笑顔。

弱音は許されない環境、本音を隠す辛さ、魔女と呼ばれる人生。





『これは夢よ、大丈夫、』





やけに冷静な思考だけが場違いで、思考とは裏腹に夢の中の私は全然“大丈夫”なんかじゃなかった。










息が詰まるような鼓動の速さを感じて、パッと視界が見慣れた木目の天井へと変わる。


ドクドクと、心臓の音がやたらと耳につく。ハァハァと肩で息を続ける自分に「どれだけ動揺してるのよ」と悪態を吐きながらも、どうしようもない恐怖心。







特徴的な笑い声が、部屋中を支配しているような錯覚。あの賤い笑顔に、何度“絶望”を知ったか。


自分を守るように膝を抱き抱え、逃げるように目を閉じて耳を塞いだ。




それでも纏わり付く“過去”に、涙を流すなと咎める人は誰もいない。
















***







自分に涙など似合わない。過去に囚われるなど、らしくない。


呪文のように言い聞かせた言葉のおかげか、涙を流したのはほんの数分。








数分と言えども、泣けば喉が渇くもので。水を飲みに向かったキッチン。

当たり前に誰もいなくて、安堵と不安が入り混じる。






弱い自分を見られたくない。だけど誰かに助けてほしい。誰もいなくて良かった。なんで誰もいないの。

アイツに会いたい、会いたくない。


あまりに矛盾している自分の思考。

「ふふ、すっごいわがまま」









「何がだよ」

自嘲気味に呟いた言葉に、返事なんて期待してなくて、それでも返事は返ってきて。


驚いて視線を向けると、ドアにもたれ掛かるルフィと目が合った。


「ナミ、泣いてたのか?」






何でこいつは。何でそう真っ直ぐに。


返事に困っている私を遠慮なく自身の腕の中に収めて、ポンポンと背中を叩いてくれる心地好いリズム。







「いやな夢でも見たか?」






ルフィのベストをぎゅっと握ったのは、ルフィの問いを肯定しているようなもので。
知ってか知らずか、ルフィは「頑張ったな」って。



何なのアンタ。

何も知らないくせに、何でそんなに知ってるの。

怖かったのに、何でこんなに安心するの。

止まった涙が、何でこんなに溢れるの。









「ナミは泣き虫だなー、」

「う、る、さい」







もはや理由も分からないくらい。子供みたいにわんわん泣いて、普段はガキのくせに何だかルフィが温かくて。


頭をポンポンと撫でられる子供みたいな仕草が何だか恥ずかしくて、それでも馬鹿みたいに安心して。


いつだって、救ってくれるのは“この腕”で。









本音言うとね、目が醒めた瞬間。
一番に、アンタの顔が浮かんだのよ。

っていうのは内緒だけど。









「ありがとぉー」


涙と鼻水でグシャグシャで、紡ぐ言葉も嗚咽が混ざってグシャグシャで、それでも。


助けてくれてありがとう。泣かせてくれてありがとう。
分かってくれて、ありがとう。










「んん、気にすんな!」






この笑顔に、何度“幸せ”を感じたか。







まあこれも、秘密だけどね。






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