築きあげてくイデア像 | ナノ





変わらない“何か”と


新しく手に入れる“何か”。












さあ、君はどちらを望む?





















築き上げてくイデア像


























「安定した生活。」

「ハハッ、お前らしいや」

「だから頑張って稼いできてねv」

「はいはい、頑張りますよー」







夢にまで見た新婚生活。

その幸せさは、未だに夢かと疑ってしまうほど。



目覚ましの音で二人で目覚め、「エースはまだ寝てて」と寝起きの声で微笑まれ、その笑顔にキスをして。

腕の中の温もりが失われて寂しさを感じながらも夢の中へと突入した頃、脳に届く愛しい声。



身体に鈍い振動を感じ目を開けると、そこにあるのは嬉しそうなナミの顔。そこで初めて交わす、「おはよう」の挨拶。



身体を揺すっていた為か、肩に置かれている細い腕を引っ張って、オレンジの頭を引き寄せて、その唇に口づける。

朝だとか、これから仕事だとか、そんなことも忘れそうな程深くなる口づけに制止をかけるのはいつもナミで。
なけなしの理性を引き出して本能にストップをかけるのはいつも俺。

吐息が触れ合う五センチの距離。



「おはよう、エース」

「あぁ、おはよう」



もう一度だけ、触れ合うだけのキスをして、そこでやっとナミの頭を解放して。



「ナミ、ここ座れ」

「え、なんで?」


ポンポンと叩くのは自身の隣。
上半身だけ起こし、「いいから来い」と問答無用にナミをベッドへと引き上げた。



小さく悲鳴を上げたナミを腕の中に閉じ込めて、本日の充電補給。

「あー、安心する」


額や頬に幾度となく口付けを落とし、ナミの肩に顔を埋める。

クスクスと笑うナミが「エース、そろそろ時間」と言う時まで。
















***











「行ってらっしゃいのキスは?」

「朝からどんだけすれば気がすむのよアンタ」

「あと百回したって足りねぇ」

俺から仕掛けるキスに、いつも可愛く照れながらも受け入れてくれるナミだけど、どうやらコレだけはとてつもなく恥ずかしいらしい。



玄関で。妻を抱き締めながらキスして欲しいとねだる夫と、大人しく夫の腕の中に収まりながらもそれを拒否する妻の姿は、なんとも滑稽な姿だろうか。


(相当ハマってんな、俺)



何度しても足りないキスに、いつだって抱き締めていたいこの身体。
愛しくて愛しくて堪らない彼女が、今、自身の“奥さん”だなんて。



「ナミの為に頑張ってくるのに、してくれねぇの?キス、」



我ながらずるい言い方だと十二分に自覚はしていても。
幾分戸惑った様子の彼女が頬を赤らめながらも「今日だけだからね!」とキスをしてくれるのだから。
我ながら本当に、ずるい男だと思う。





「行ってらっしゃい!」

「行ってきまーす」

「顔!緩んでる!」

「はーい」

「もう!しっかりしてよ!ヘラヘラされると私が恥ずかしいじゃない!」



そんな事言われても。
幸せすぎるのだから仕方が無い。

緩む顔の原因は全て自分にあると、ナミは自覚しているのだろうか?





「よっしゃ、頑張るか!」




ニヤける頬を引き締め、今日も頑張る、愛しい愛しい妻の為。

たった今家を出たばかりなのに、脳内は既に「おかえり」を待ち侘びているだなんて。
ナミは知るはずもないだろう。









そして今、夫を送り出したばかりの玄関で。

「もうっ、本当に、毎朝心臓に悪い、、」


ヘタヘタと座り込み、顔を真っ赤にしながら緩みそうになる頬を必死で引き締める妻の姿があることなど、エースは知るはずもないだろう。













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