2 | ナノ

















「ナミー、お前体力ねぇなー」


「馬鹿。あんたが元気過ぎるのよ」


「ししっ、おれ海賊王になるために鍛えてっからなー。強いんだぞ!」




望み通り私を冒険へと連れて来てくれたルフィは、昔っから変わらず底無しの体力の持ち主だったらしい。「休憩にしよう」と言った私に「体力無ぇなー」なんて笑いながらも“ある場所”へと連れて来てくれた。


ルフィ曰く、“とくべつな場所”。












海が一望できるその丘は、どことなく故郷のベルメールさんのお墓を思い出させた。あそこは私の、“特別な場所”。






「ししっ!いい場所だろ!」


「えぇ、とっても。」




嬉しそうに両手で帽子を被り直す少年の、子供らしい仕草に今日は頬が緩みっぱなしだ。まぁ、仕方ないか。だって、こんなにもかわいい。







「はい」

「んん?」



差し延べた手を、不思議そうに見つめる少年。いつもなら喜んで握って来るくせに。なんて、自分の考えにまた笑いがこぼれる。






「手、つないで頂戴」


「‥‥おう、いいぞ!」



漸く合点があったとばかりに、笑顔で手を握って来るルフィが、可愛くてしょうがない。小さな手も、全てが堪らなく愛しくなったと同時に、華奢なくせに逞しいあの腕が恋しくもなる。






「ナミ!お前いいやつだから、おれが海賊になったら仲間にしてやる!」


「あら、高いわよ?」


「宝払いで!」



「私の船長は強いわ、私を仲間にしたいならあいつよりも強くないと」


「おれが負けるもんか!」





小さな姿で、私を仲間に誘ってくれているルフィに愛しさが込み上げてくる。大丈夫、私はちゃんと、あんたの船に乗ってるわ。










「楽しみに待ってるわ、ルフィ」









頬にちゅっとキスをして立ち上がる。




顔を真っ赤にさせているルフィを見て吹き出した。ほんと、かわいいわ、あんたって。







「じゃあ行くわ、私」



んー、と伸びをして、未だ放心状態のルフィにそう告げる。途端に意識を取り戻し慌て出すルフィに、また吹き出した。




「‥っは!え、ちょ、行くってどこにだよ?!」



「仲間のところへ、そろそろ時間だもの。」






呼ばれている気がするの。あいつの声が、聞こえる気がするの。






「ナミっ!」




声変わりもしてない高い声に涙の影が混ざって、私はもう一度だけルフィの頬にキスをした。









「必ずまた会えるわ。」









「またね、ルフィ」
























***


















温かい腕。華奢なのに筋肉がしっかりとついた胸板。男としては高めだけれど、声変わりを終えた声。その全てが心地好くて、目を開けると私を見つめる心配そうな瞳にぱあっと光が灯った。



「ナミっ!!!」


「‥ルフィ?」


「ナミ!気ぃついたか!!お前なー、心臓止まるかと思ったぞ!貝触るなら触るって最初に言え!」



「あ‥、ごめん」




「死んだかと思ったんだからな!!心臓飛び出たぞおれは!」






私をぎゅっと抱きしめている腕は、私がさっきまでひどく恋しく思っていたもので。小さな姿を思い出し、成長したなー、なんて。



怒ってるルフィには悪いけど私は頬が緩むのを止められないから。それに、こいつに一つだけ言っておきたいこともあるしね。


ルフィの首に腕を回して、自分から抱き着いて。ちゅっと頬に口づけた。ルフィの顔が真っ赤になることはなかったけど、きょとんと私を見つめる黒い瞳は先程の記憶と同じで、また笑いが込み上げてくる。





「ね、ルフィ?」



「?」



「迎えに来てくれて、ありがとう」









今日はとても上機嫌な私だから、我ながら完璧すぎる笑顔で言えたと思う。いつも素直じゃない分、今ならとっても甘えられそう。


目の前にいるこいつが、すごく愛しい。





この男は、きっと分かっているんだろう。

変に鋭いやつだから。私が告げた“ありがとう”の意味を。












もう一度頬にキスをして、「大好きよ」と笑った。




太陽みたいな笑顔で「おう!おれも大好きだ!」と答える男に最後にちゅっとキスをして、立ち上がる。










「さ、帰ろっか!」














未来を旅する、あの船に。
















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