時空旅行 | ナノ






今も昔も
















変わらずあんたが愛おしい。




















時空旅行






















普通じゃ起こり得ないことが日常として起こる。

それがグランドライン。



初めはグランドライン特有の天候にさえ驚いていた自分が、今じゃ喋るトナカイやサイボーグ、生きたガイコツなどと生活しているのだから、随分と“普通じゃない日常”に慣れたつもりでいたのだけど。



どうやらグランドラインは、まだまだ私の想像を遥かに上回るらしい。







「こんなことってあるのね‥。」






今、私の一歩前を鼻歌交じりで歩くこの少年。

10歳にも満たないだろう少年の左目の下には、よく見知った傷があったし、何よりこの少年の身体は伸びた。


限界など無いかのように。
そう、まるでゴムのように。







「ほんとにルフィの過去に来ちゃったんだわ、私」














この状況を説明するには、少々時間を遡ることにしよう。






ログポースに従い上陸した島で、私はルフィを連れてショッピングを楽しむつもりだった。そう。楽しむつもり“だった”。


結局は、ルフィが大人しく買い物を待てるはずもなく「冒険の匂いがする!」という声が聞こえた時には、時既に遅し。

ぐるぐると腰に巻き付くルフィの腕。もう片方の手は遥か遠くの建物へと伸びている。背中に感じる冷や汗。これから起こる事態を察した私は悲鳴を上げずにはいられなかった。









「何すんのよ!!」そう怒鳴って鉄拳を一つ。ぐるぐると腕を巻き付け固定され、飛ぶわ走るわ落ちるわの恐怖は確実に私の寿命を削っただろう。辿り着いたのは街からはだいぶ離れたであろう寂れた広場。そして目の前には、怪しさ満点の置き台。台の上にはこれまた怪しく“記憶貝”と書かれた貝と共に、いくつかの注意書き。

隣には、好奇心に目を輝かせたルフィ。


ルフィに促され注意書きを読むにつれ、私までもを取り巻く好奇心。







「過去へ旅行してみませんか?」








最後の一行を読み終えた私はルフィの手を握り、貝の拡張をぎゅっと押した。














そして話は今に至る。


“記憶貝─メモリーダイアル─”と書かれたあの貝は、どうやら本当に私をルフィの過去へと連れて来たらしい。






「ねぇ、ルフィ?」



ルフィと呼ばれ、少年は振り返る。「ん?何だ?」と見上げてくる少年のあどけなさに、思わず口元が緩む。



「どこに連れてってくれるの?」



「行き先なんて決まってねぇぞ!何だ、お前どっか行きてぇのか?」




くりくりとした大きな瞳が、私を見上げる。何だかくすぐったくなって、少年と同じ目線になるようにしゃがみ込んだ。少年の首にかかっている麦わら帽子を頭に被せてやり、微笑む。







「私、あんたと冒険がしたいわ。連れてってくれる?」



「おう!いいぞ!!!」






眩しいくらいの笑顔は、今も昔も変わらない。













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