最後まで、最期まで | ナノ







「 泥棒猫 、」







低く、どこか色気を潜めた声が届いた時には、もう遅くて。




しっかりと握られている右手に驚いて振り向けば、そこには見知った顔があった。




























最後まで、最期まで
































「‥‥トラファルガー、」

「へぇ、俺を知っているのか」

「知ってるも何も、一度会ってるじゃない。」





あれは確か、シャボンディ諸島。会話こそ無かったものの、私は確かにこの男と会っている。


それに加え、二億の賞金首ときたら。顔も名前も、覚えるのが必然だろう。






「私があんたに知られてるってのは予想外だったけどね」



いくら今注目を集めている麦わらの一味だからといって、賞金額が高いわけでも、危険視するべき戦闘員でもない。

そんな私を、彼が知っていて、更には声を掛けてきたことに。
ただ、純粋に驚いたのだ。









「手配書、」


低く、甘く、けれど冷たく。
不思議な含みを持って響く声に、いい声だな、なんて場違いなことを考えながら。


未だ握られたままの右手をゆっくりと持ち上げられ、手の甲に吐息がかかる距離。

「イイな、あの顔。そそる。」



口づけるでもなく、それでも彼が言葉を発する度に触れる唇。

嫌がることも恥じることもしない様子の私を見て、トラファルガーは片方の口角だけを微かに上げた。
思考を読めないその瞳。
私は彼を何も知らない。




けれど、彼も所詮は海賊で。

それ以前に、男なのだ。












「誘ってるの?」

「そうだと言ったら?」


「断るって言ったら?」


「今この場で、消してやろうか」



ペロリと手首を舐められる。
それは丁度、トクトクと。一定の振動を刻む、そのあたり。





良い噂など聞いたことが無い。それは海賊にとって、当たり前と言えば当たり前なのだけど。

耳に入る情報はいつだってイカレてる情報ばかりで。






無茶苦茶な男だと、心底思う。



「拒否権は無いわけね。」

「処女なわけでもないだろう?」




まあそうだけど。何が悲しくて敵船の船長と。
何だかルフィ達を裏切る行為のような気がして、気が引けるというのが素直な気持ち。





それでも私に拒否権は与えられなく、そうこう考えている今もトラファルガーに手を引かれ、足はトラファルガー曰く“目的地”へと進んでいる。







「一つだけ聞くわ、」

「なんだ?」


「 セックスに心は必要? 」




足は依然進んだまま。視線だけをチラリとよこして、彼は面白そうに口の端を上げる。


「 必要無い、邪魔なだけだ 」


「じゃあいいわ。貴方の相手、してあげる」





私のその言葉を聞いて、とうとうトラファルガーは声を出して笑い出した。














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