探す答え | ナノ



愛しい。



愛しい。








狂おしい。















探す答え



















「ナミ‥、」



酷く掠れた己の声でさえ、気持ちを高ぶらせる興奮材。頭の上で腕を固定されている裸体は腹が立つ程に美しかった。淫らに乱れる、魅惑的な彼女。そんな彼女を見下ろす、未だ服を身につけたままの俺。



「ナミ、欲しいか?」





俺の声はナミに届いているのか否か。そんなことはどうでもいい。ナミが“欲しい”と言ったところで、その願いを叶えてやる気など更々無いのだから。



肩で息を続けるナミ。張り詰めた自身も限界を訴えている俺。痛い程の自身を無視して、ナミの首筋に顔を埋めた。湿った肌から感じる、ナミの匂い。ナミの身体に増える、紅い跡。まだまだ足りない。もっと、もっと。

ナミから零れる甘い声が、俺の思考を掻き乱す。正常な思考なんて初めから、在って、無かったようなもの。いつでも気持ちはギリギリだった。






「っ、ロー、はや、くっ」


息も絶え絶えに、潤んだ瞳からは涙が溢れている。上気した頬、自分の名を呼ぶ甘い声。本日何度目になるのか、数えるのも面倒臭くなるほどの、彼女からの悲願。こんなに彼女が自分を求めているのに。今すぐ彼女の中に入って激しく動き出したいのに。



「お願い‥、もう待てな、い」





彼女の望みを、叶えたくない。





彼女の秘所に、三本の指。突起した蕾を親指でこねくり回し、彼女の中で指が暴れる。揺れる二つの膨らみ。その一つに吸い付いた。


「んっ、あぁあ、指じゃなっ、いっ」


途端、跳ねる彼女の腰。散々絶頂を迎えた彼女の肢体は敏感に快感を感じ取る。絶えることない甘い声。艶やかなる肢体。


いつでも魅力的な彼女に、腹が立つ。逃げられない、逃がさない。イラつく気持ちを指に込めて、嫌々とかぶりを振るナミを無視して、ナミを絶頂へと導いた。






痛い程に反り返る自身はもう無視のしようが無い。投げ捨てるように服を脱いで、ナミの腕を拘束する包帯を解いた。自由になった彼女の腕は、力が抜けたようにシーツへと投げ出されている。


「ナミ、」



高い温度の頬を撫で、視線を合わせる。溢れ出る涙を唇で拭って、彼女の腕を自分の首へと絡ませた。噛み付くようなキス。想いが溢れたキス。止められない、止まらない、止めない。彼女の舌を絡めて吸って、零れた唾液すら勿体ないとばかりに舐め取った。入口で自身を滑らせれば、ナミから声にならない吐息が漏れる。


「入れるぞ」



ぎゅっとしがみつく腕が、二人の距離を近くする。唇を混じり合わせて、指を絡ませて、身体を繋いだ。この女と一つになっている。夢かもしれない、そんな感覚。ナミの声も呼吸も、全て飲み込んだ。興奮、感動?どれも違う。訳の解らない感情が支配する、この行為。何も考えられない、考えたくない。ただひたすらに、腰を動かしてキスがしたい。



「っ、ロー、んっ」



キスの合間、俺の動きに合わせるように、名前を呼ぶ声。唇を離し、ナミの瞳を覗き込む。身体を揺らされ焦点の合わない瞳が俺を捕らえようと。首から離れたナミの手が、俺の頬を包む。


「泣かないで」



果たして。俺は一体、どれだけ間抜けな顔をしたことだろう。それはそれは、思わず腰の動きが止まってしまうほど。だってそうだろ?涙を流してるのはお前で、俺は。


「‥泣いてなんか、ない」


出た言葉は奮えていたけど、でも。俺は泣いてない。視界は奮えているけど、それでも。視界が滲むことはない。俺は、泣いてない。



「でも、泣きそうな顔してる。今にも泣き出しそう。さっきから、ずっと。」









「何がそんなに、不安なの?」俺を見つめる瞳は、優しかった、美しかった。頬を包む彼女の手は、温かかった。









何でだろう。分からないんだ。


お前を見てると、イライラする。誰もを魅了して離さない立ち振る舞いに、腹が立つ。逃げられない、戻れない、救われない。


興奮、感動?どれも違う。言葉に出来ないこの行為に、溢れたものは何なんだ?






この感情を。愛しさだと、人は言う。

彼女の上体を起こして、抱きしめる。身体は未だ、繋がったまま。不安じゃない、泣いてない。そんなことじゃない。ただ、繋がりたい。心も。



「お前を見てると、イライラする」


「あら、奇遇ね。私もよ」

「‥これは、何でだ?」





随分と弱い声になっていたのだろう。裸で抱き合っているというのに、何も知らない子供のような。そんな俺の様子に、ナミはくすくすと笑って俺の髪に指を絡ませた。ナミの肩に額を預けて。細い身体で、その重みを支えてくれる。



「好きよ。好きすぎて腹が立つわ、あんたに」






興奮、感動?この行為を支配する感情は何なのか。弱さ、狂気?独占欲、安心感?全てを引っくるめて、愛情だった。






愛しい、愛しい。

好きすぎて、狂いそうだ。






「ナミ、好きだ」

「うん」

「好きなんだ」

「うん」

「好きだ」






「伝わってるわ、もう随分と前から」










彼女をシーツへと戻し、想いを伝えるキスをして、再び腰を動かした。


背中に刺さるナミの爪、ナミの身体に咲く紅い跡。一際声が高く短くなったナミが、嫌々と頭を振る。「どうした?」と問えば「ローも一緒に」と息も絶え絶えにかわいいお願い。



お前の望みならどんなことでも聞いてやりたい。愛を認めた人間は、こうも変われるものなのか。



そっと瞼に口付けて、溢れる涙にも口付けた。キスに込める、激しい戦慄が伝える、この想い。



「ナミっ」
「ロー、っ」













辿り着いたのは、愛情の向こう側。










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