私達のリアル | ナノ



「おい!ナミ!!!」




「なぁに?」




「お前、サンジのこと好きになるのか!」




「‥は?」








「ウソップが言ってたぞ!“ナミがサンジのこと好きになるのも時間の問題だ”って」

























私達のリアル






















いきなり何を言い出すのかと思えば、 この船長は。


私は今、蜜柑畑で蜜柑の世話をしていた訳で、そこに足音荒く不機嫌な様子を隠すこともしないルフィがやって来た。

そして先程の台詞。



流石は船長の器と言うべきか、ルフィの唐突さにはいつも驚かされる。







まあ、心当たりがない訳ではないが。






つい最近の話だ。

ウソップとサンジくんの態度について話しをしたのは。



その際に、『悪い気はしない』と言ったのは私。

でもそれは“嫌ではない”という意味であって、だからと言って“サンジくんを好きになる”とは別の話しだと思う。




あの長っ鼻がルフィにどんな言い方をしたのかは知らないが、現に私は今船長に怒られている。





心外だ。





私はこれから先も、サンジくんのことを好きになる予定はない。


私の好きな奴は、恐れ多くも我が船長。



そう、今私を怒っているこいつ。








「サンジくんのことは好きよ。でもそれは仲間として。あんたが考えているような仲になることはないわ。船内の秩序は乱さないから安心してよ、キャプテン」




そう笑顔で告げた私の表情に比例するように、ルフィの表情は一層不機嫌になったようだ。




“どうしたの?”

その言葉を紡げなかったのは、信じ難い事態が起こったから。













私は今、ルフィに抱きしめられている。





「そういうこと言ってんじゃねぇだろ。」





不機嫌そうなルフィの声がダイレクトに脳に響く。



何に対しての“そういうこと”なのか。


何で私はルフィに抱きしめられているのか。






上手く回らない頭。

驚きと戸惑いで動かすことの出来ない身体。





あぁ、そうか。




(これは、夢‥?)







「船がどーのとかじゃねぇぞ。おれがナミがサンジを好きになったら困るんだ。」





だって信じられないじゃない。


“あのルフィが”って。

ルフィの目に映るものはいつだって冒険、夢、肉、仲間。



そんなルフィを好きになった。

見返りを望んではいけない、けれども想うのは自由だから。


そう思って自分の気持ちを抑えてきたのに。








「それは、あんたが船長だから?」






やっと出た言葉は、私の最後の賭け。


“そうだぞ”と頷いてくれたら、今ならまだ笑って流せる。

この腕の温もりも忘れられる。












降ってきたのは、呆れたような、それでいて悲願するような。



「ナミ、お前いつになったら気付くんだ?」




そんな声を、私は知らない。







「ロビンが言ってた。ナミにはちゃんと言わないと伝わらねぇって。



まだ伝わらねぇのか?」








自然とルフィのベストを掴む。
この温もりも、言葉も、全部が現実なのだと。





まだ信じられない私がいるから。



あんたの言葉で、声で、信じさせて?





「伝わらない‥、肝心なこと、聞いてない、あんたは私のことどう思ってるの?」










「好きだ。」












「ナミ、好きだ」その言葉が脳に響く度、私の目から涙が零れる。



気付いていた。

ルフィの気持ちなど。





それでも夢に向かって輝く船長を前に、傷つきたくないからと気付かないふりをしたのは私。


自己満足の恋と言い聞かせて、逃げていたのは私。







認めてしまえば、もう止まらない。



いつかこうなることも、全部全部わかっていた。











「ごめんね、ルフィ」




言葉は、素直に出て来た。





「逃げてて、ごめん。私もルフィが好き。ずっと、ルフィが好き、大好き、「ナミ。」


「?」


「知ってる」








瞼に、額に、頬に。


ルフィからのキスが降ってくる。







ちゅっと触れるだけのキスをして、目を合わせて笑い合う。







互いの気持ちを知っていながら。

臆病に逃げ続けた不器用な私たち。









私たちの幸せは、今からがスタート。







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