美しい名前 | ナノ



現実はいつだって、予想を遥かに上回るということ。





お前だってもう、「知らない」の一言で済ませられるほどの温い世界を生きてはいないだろう?
















美しい名前





















『 死ぬかもしれない 』そう思うことは何度もあった。

当たり前だ、海賊なのだから。



『 死にたくない 』そう思うことは一度も無かった気がする。
『 今は死ねない 』と思うことなら何度もあったけども。





自身の“生”を誰もが嫌悪した。
それでも授かってしまった“生”が、存在し続けることなど誰も望まなかった。




生まれたことが間違いだなど、自身が一番分かってる。
身をもって痛感していた、己という無意味さを。









『 生きよう 』と、初めて思えたよ、ありがとう。



俺がいなくちゃ困ると言った。
一人になるのは嫌だと。
俺に、生きていてほしいと。


俺が死んだと勘違いし、涙した。
生きていたと分かってもまた、涙した。





守るべき存在ができたよ、ありがとう。生きる意味を見つけたよ















『 死にたくない 』
命が惜しい、まさかこんな涙を流す時が来るなんて。
自身の命に、これほどの価値を見出だせるなんて。




世界最強と謳われる男の、偉大さに救われる。
追い続けてきた背中が、より一層輝きを増している。
共に命を懸けてきた仲間が、今、自分の為に世界と闘っている。


今まで笑顔を交わしてきた沢山の人間が、今、俺の為に。






場違いな嬉しさが溢れる、こんな喜び知らなかったよ、ありがとう











ルフィの腕に支えられて、最期は笑えると思ったんだ。
嫌悪、憎悪を肌で感じて。
それと同じだけの、否、それ以上に深く温かい、愛に囲まれて。



( 兄ちゃん失格だな、それでも )























「 愛してくれて、ありがとう 」



























***
















太陽が消えた世界は、ただ破滅へ向かうしかないってこと。

エースは知ってるのかな。









大きな背中は、いつだって憧れだった。


エースは強い。
そんなエースが、死ぬはずねェって。

必ず助けられるモンだと、無力ながらに信じてたんだ。








エースの為にこれだけの人間が命を懸けて戦ってるよ。
これでもまだ、エースは自分のこと『 いらない 』なんて言えるのかな。





叫ぶ名前。
皆が一心に求める名前。

目的は一つだったんだよ、エース。











離れてたって、出会ってなくたって、おれはエースのいない世界を生きたことなんか無いんだよ。

だってそうだろ?


おれが産まれた時、その時すでにエースはこの世界を生きていたんだから。

















無力な両手が紅に染まる。

自分の血で汚れている時は気にも留めなかったソレが、エースの血だと思うと途端に恐怖で震えた。

何度も呼んでいた名前が、ふいにゾッとするほど虚しく響いた。








消失の予感に、ただ焦ることしかできなかったんだ。


繋ぎ止めようと抱きしめる身体が離れていくことが怖かったんだ。










伝えたいことは沢山あったよ。
それも、もう伝えることはできないよ。



エースのことだから、おれの気持ちなんて全部お見通しだったんだろうけど。


今もまだ、これからもまだ、
エースの名前を呼び続けるよ。
















( ありがとうは、まだ言えねェ )


















「 エースのばかやろー、」






















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まだ現実を受け止めたくないルフィと管理人←

それでも受け止めなきゃいけない辛さを乗り越えた時、「ありがとう」が言えるんですよね









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