君の好きなうた | ナノ


ちらほらと降り始めた雪が、今日の解散の合図だった。








君の好きなうた








さく、さく、さく





本格的に降り始めた雪に並んだ足跡の平行線。

隣では鼻の頭を赤くしたナミが今日の出来事を振り返っては一人思い出し笑いを繰り返している。


そんなナミを見つめるおれ。


時々ナミが「ルフィ!聞いてる?」などと文句をつけてくるものの、正直ナミの話は全く聞いてねぇ。


頭の中は、先程の親友の言葉でいっぱい。












「いいかルフィ。今日こそ!今日こそは、ナミに告白するんだ!」














ルフィの気持ちにはナミもとっくに気付いてるはずだ、お前等もう見てらんねぇよ。と、鼻の長い彼はそう言った。





“えっ?何でウソップ俺の気持ち知ってんだ?エスパーかお前!”

“よくぞ言ってくれたルフィ。俺様は実はエスパーなんだ。だから俺様には分かる。ナミもお前と同じ気持ちだ!”

“えぇー!ウソップすげぇな!エスパーならビーム出るだろ?ビーム出してくれよ!”

“え、いや、俺様の話‥”




そんな先程の会話を思い出す。

頭の中で、親指をグッと立てたウソップが“頑張れよ!”って応援してくれてる。




よし、そっか、頑張らないとな。



「なぁ、ナミ」

「ん?なあに?」


マフラーに顔を埋めていたナミが顔を上げルフィを見つめる。



「あのな、」

「?」


首を傾げてルフィを見つめる、ナミ。




「何よ、」





見つめる、ナミ。









「あぁああぁぁ!」

「?!」



ちくしょう、かわいい。



そんなかわいい仕草でじっと見つめられたら、おれ何にも言えなくなっちまう。



「やっぱ何でもねぇ!それより知ってたか?ウソップってエスパーなんだぞ!」


「あんた今度はウソップにどんな騙され方したのよ。」


ふふって笑ったナミはやっぱり可愛いから、おれもつられて笑っちまう。



「しししっ」

「なあに?嬉しそうね」

「おう!ナミが隣にいるから、おれ今嬉しいんだ!」

「‥っ!」

「んん、どしたナミ、いきなり止まって」



いきなりナミの足が止まったから何事かと思って後ろを見たら。


りんごみたいな顔したナミと目が合った。

途端に足早におれの隣に戻ってきたナミは少しだけ怒った顔してる。






「ナミ?どっか痛いのか?」

「違うわよ」

「腹減ったのか?」

「お腹いっぱい」

「寒ぃから機嫌悪いのか?」

「‥ぁ‥‥の‥い」

「んん?」


いきなりバッと勢い良くおれの方を向いたナミの顔はやっぱりりんごみたいで、ナミばっか見てたおれにはナミの言葉がよく聞こえねぇ。



慌てて聞き返した頃には気付くともうナミの家の前。


「あんたのせいだから」

「んん?何の話だ?」

「私が怒ってるのは、ルフィのせいよ、って話!」

「えっ!それは困るぞ!おれ何かしたか?」



「あんたが、言ってくれないじゃない」

「?」

「いつまで経っても、決定的な言葉は言わないくせに‥







それなのに、こんなにもドキドキさせられるなんて、ずるいわ。」











***


ナミはずっと待ってたのか?



ナミもおれと同じ気持ちって思っていいのか?






「ナミ‥!」



よし、言うぞ!そう思ってナミの名前を呼んだのに。


「ナミ?」



当のナミは知らぬ顔で玄関へと歩みを進めた。




「ナーミぃー」



振り向け!

好きって言わせろ。


そんなおれの想いが通じたのか振り向いたナミには可愛い可愛い魔女の笑み。



「明日v」

「へ?」

「明日、待ってる。散々待ったんだもん、格好良い演出、期待してるわv」








「沢山悩んでねv」



可愛い笑顔と小悪魔のような台詞を残して家の中へと消えたナミ。





一人取り残されたおれ。




まいった。







「しししっ」






さっきまで歩いてた道の、二人分の足跡を踏み締めながら、考えるのは明日のこと。







明日は学校についたら一番にナミの教室へ向かおう。

それとも、朝ナミの家まで迎えに行こうか。



「しししっ」




明日の二人を想像し、ふと頭を過ぎるのはナミが好きだと言っていたあの曲。



「〜♪〜♪」


明日は、二人でこの曲を聴くのも良い。

ナミの好きなものはおれも好きだと言ってやろうか。

だってナミが大好きだから、と。







逸る気持ちを抑え切れずに気付けば口ずさんでいたあの曲も、ルフィの興奮を高めるものでしかなく。



早足が駆け足に変わり。




冬空の下、君の好きなうたを口ずさみながら。


考えるのは君のこと。







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