2 | ナノ

結局その日、私はサンジくんに抱かれ、まんまと彼に溺れてしまった。


雰囲気とか、綺麗過ぎる瞳とか。



苦手だったはずなのに。



自分でも訳がわからないくらい、彼に溺れるのに時間はかからなかった。







あの日から結局、私は1年間彼のマンションに通い続けている。





“今日で最後”




何度そう決心しただろうか。

出会った時から分かっていたはずだ。サンジくんの性格など。

女たらしで、口が上手くて出会ったその日に口説いて、マンションに持ち帰っちゃうような男。


現に私はサンジくんから好きだとは言われても、付き合おうとか、そういった核心的な言葉は言われていない。



体だけの関係。

そんな関係なら楽だったのに、私はその関係に愛を足してしまった。



割り切れないのだ。どうしても。



ましてや、サンジくんは私の気持ちに気づいている。それでも何の言葉も無く、こんな関係を続けているのだから生粋の女好きなんだろう。



そりゃあ私だって、何度も期待はした。

サンジくんの態度からして、好かれてると思ってしまうのは仕様が無いことだと思う。



でもそれは単なる私の勘違いで。



“お互い楽しめればいい”

それがサンジくんの答えだったから。

私はその答えを知った日から何も言えずにいる。




「ナミさんだってそう思ってるからここに来てるんでしょ?」



まるで、本気になるなとでも言うような言い方。

サンジくんはとても優しく扱ってくれるけど、時々、平気で私を傷付ける。




私はただ、サンジくんのわがままに付き合ってるだけなのだと。

何度も自分に言い聞かせて、何度も勝手に傷ついて。









隣には私を抱きしめながら眠るサンジくん。



無防備な、幼い、寝顔。

この寝顔は、一体何人の女のものなんだろうか。



やるせない感情が沸き上がってきてサンジくんの金髪を指に絡ませてみた。

一体何人の女がこの金髪に触れているのだろうか。




ぐるぐるぐるぐるぐるぐる、

どす黒い感情が溢れそうになる。




「ん、」

「あ、ごめん、起こしちゃった?」

「いや、いーよ」

「じゃあ、おはよう」

「おはよう、ってゆーかナミさん、何で泣いてるの?」

「え?」




ふと頬に触れる温かい手。
その温もりに視界がぼやけて、やっと気づく。






「嫌な夢でも見たの?」

「‥違うわ」

「悲しくなったの?」

「‥‥う、ん」

「なんでいきなり?」

「‥‥‥わかんない。」





いきなりなんかじゃない、ずっと悲しかった、寂しかった。





ねぇ、私泣いてるのよ?もっと焦ってよ。




本当は分かってる。

涙が流れてる理由も、サンジくんが取り乱さない理由も。



ずっとずっと前から悲しくて寂しくて切なくて辛かった。

理由は全部、あんたなのよ。

でも知ってるから。


私が投げ出せば全て終わること。

サンジくんとの関係も、全て。

   


サンジくんにとって面倒な女になったら、全て終わり。

だったら、都合の良い女でいい。


せめて強がって、『私は大丈夫』と。そんな女でいたかった。

傷付きたくない、ならば傷付かないように、平気なフリを。







本当は言いたいの。

“さよなら”って。



でもそれ以上に言いたいの。

“どうして私じゃダメなの?”って。






「サンジくん、」

「ん?」


本当の気持ちを教えて




「私のこと、どう思ってる?」

「そりゃ勿論好きだよ」

「私も好きよ」

「珍しいね、ナミさんから言ってくれるなんて」




好きなんかじゃ足りないの。

もう愛しくて狂いそう。






「たまにはね」

「甘えてるナミさんも魅力的だなぁv」





平気、平気、そう言い聞かせても、そんなの所詮は『強がり』の塊で。

疑問は消えない、不安は増える一方で。




「‥どうして?」

「ん、何が?」

「んーん、何でもないわ」










どうして




こんなに好きなのに。












馬鹿みたい









.



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -