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『あんたなんかいらない』








心の底からそう言ってやりたいと、私は何度思っただろう。


結局は。



今日も言えずに私はこの男の腕の中にいる。



切なくなるほど愛しくて、吐き気がするほど憎らしい、この男の腕の中。
















WHY

















“いらない”

私がいくらそう言ってもこの男には全てお見通しで。

私が心からそんな事思ってないこととか、本当はもう離れられない位、この男を愛しちゃってることとか。







「“一人にしないで”って言ってるように聞こえる」

そう言ってあんたは笑うから、私の中のイライラは募る一方で。



それでも反論できない私はあっという間に腕の中に収められて。






そういう余裕とか全部。腹が立つ。





私が離れる訳ないとでも思ってるんでしょ?



「違う?」

抱きしめられたまま、悪戯に微笑まれたら。


やっぱり私は反論なんてできなくて、


「自惚れないで」




やっとの思いで零れた言葉は精一杯の強がり。






そんな優しい笑顔で、私を見ないで。そんな優しい声で私の名前を呼ばないで。そんなに優しく抱かないで。




“愛されてる”


そんな錯覚を起こしてしまうから。












出会いは至って普通だった。

運命を感じた訳でも、一目で恋に落ちた訳でもない。
人数合わせで行った合コンで、遅刻して登場した金髪で長身の男。



それが今現在、私の隣で眠るサンジくんだった。




至ってよくある出会い。と、言うより第一印象はむしろ最悪だった。


女たらし

キザ

ナルシスト


とにかく女の敵。



少なくとも、自分の苦手なタイプであることは確かだった。



二度目の席替えで彼が隣に来た時は正直うんざりしたことをハッキリと覚えてる。


机に肩肘をついて、手の平に自分の頬を乗っけて、首を傾げた格好で隣にいる私を見ているサンジくんがどうしても視界の隅に入っていて。

目を細めてあまりにもにこやかに微笑んでいるもんだから、見られている方はたまったもんじゃない。

内心溜め息を吐きながら、先に声をかけたのは私。




「なに?人のことじっくり見て」

「あ、やっと話しかけてくれた」

「何か用?」

「んー、可愛いなぁと思って見てたら目離せなくなっちゃいましたv」






“軽い男”。

話すのも面倒臭くなって料理に手を伸ばした私に、サンジくんはしつこく話しかけて来た。



「名前なんて言うの?あ、オレはサンジねv」

「ナミ」

「ナミさんかぁ、可愛いなぁv」

「よく言われるわ」

「ハハッ、いーね、強気な美人。オレ好みv」

「それはどうも」

「弱ってるとこ見たくなっちゃうなぁv」

「残念、知り合って間もないあんたなんかに見せるつもりはないわ」



「ベッドの上で、とかどう?」




思わず見上げた視線の先。

初めて間近で捕らえた瞳は、長い前髪のせいで片方だけしか見えなくて。

それでも一つだけ見えているソレは、とても綺麗な蒼色をしていて。





合コン特有の雰囲気や、

若さ故の遊び心や、


さんざん飲んだお酒の酔いに




流されてしまったんだ。









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