6 | ナノ







後悔、後悔、後悔。それと少しの、達成感?ほんの少しだけ、『言っても良かったんだ』って思ってる俺がいる。



だけどソレは。ナミさんの表情を見たらあっさりと後悔に覆われた。








「‥サンジくん?」






『何言ってるの?』そう言いたそうな瞳で俺を見るナミさんはやっぱり。もうあの頃のナミさんでは無いんだ、と。




心って、どうしてこうも儚いんだろう。思い出って、どうしてこうも現実味が無いんだろう。



失ってから気付く。手に入らなくなってから求める。


手に入れてるうちは、傷つけることしか出来なかったくせに。

後悔、後悔、後悔。それと多量の、喪失感。









「何でもないよ、ごめん。忘れて」







これ以上はキケンだ。いや、もう手遅れだ。グラスを持って立ち上がり、流し台へと向かう。背中に感じるナミさんの、居心地の悪い、視線。


手早くグラスを洗って、キッチンを出る。「俺もう寝るね」と軽く微笑んだ俺は、ナミさんの顔を見る余裕なんて、ない。








「サンジく「ナミさん、おやすみ」



俺を呼ぶナミさんの声を遮って、出来るだけ優しい声で別れを告げた。

扉の向こうで、彼女は今、どんな表情をしているのだろう。






何もかも忘れて、ナミさん。

そして忘れさせて。思い出も、この想いも。











すぐに男部屋に戻る気にもなれず、甲板で適当に時間を潰す。一人残してきたナミさんが気になるなら、素直にキッチンに戻ればいいのに、俺にはそれが出来ない。





脱力感に襲われて、上を見る。月が綺麗だ、星が綺麗だ。それなのに。俺の視界は、タバコの煙で霞んでいる。















どれくらいこうして居ただろう。シャツは冷気を吸い込み、随分と冷たくなってしまった。肌寒さを感じて男部屋に戻ろうとした時、ふと目に入ったのは風呂場の明かり。使い主は、きっとアイツ。

今ナミさんに必要とされてるであろう、クソ野郎。









荒々しく男部屋に戻った俺に、ウソップが「何かあったのか?」と聞いてきた。


「何でもねぇよ」










そう、何もなかったんだ。




初めから。












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