4 | ナノ






***









仕込みをしてる時から気付いてた。



ダイニングテーブルで酒を飲むナミさんの、いつもとは違う雰囲気に。














「ナミさん、何かあった?いつもと様子が違うみたいだけど」



理由なんて簡単に想像がつくけど。

それでも声をかけるのは紳士としての礼儀みたいなモン。





女の子は皆、大好き。皆、かわいい。





「あ、サンジくん‥」




自分の分のグラスを持って、ナミさんの向かいに腰かける。ナミさんは俺の存在に今気付いたかのように俺の名前を呟いた。先程の問い掛けはナミさんには届いていなかったらしい。まあいいさ。答えなんて聞きたくねぇ。





ナミさんの目を見て、微笑む。手に持ったグラスを傾けて、問う。


「御一緒しても?」




ナミさんの答えは、一つだけ。それを分かっていて、ずるい俺。



「えぇ、どうぞ」




俺のグラスに酒が注がれる。ナミさんと時間を共にしてもいいという、許し。

力無く微笑むナミさんからは、誰かが側にいてくれるという安心感が伺える。先程、キッチンから見たナミさんは無気力な人形のようで、そんなナミさんを思い出せば、多少気力が宿ったナミさんを見て安心するのだけど。


誰でもいいんだ。俺じゃなくても。“俺”がいるから安心してる訳じゃない。“人”がいるから安心してるんだ。



我ながらあんまりなクソな思考に、自嘲の笑みが零れる。気付かないフリでもしとけばいいのに。

肘を付き頭を支えている左手で、そのままクシャリと髪を乱す。



グラスを持った右手を差し出すと、ナミさんが笑った。



「「乾杯」」




君の素敵さに、君と過ごす時間に、乾杯。











女の子は皆、大好き。皆、かわいい。


なのに何でだろう。何で彼女だけがこんなにも。苦しい程に特別なんだろう。






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