ギン乱プロポーズ | ナノ








護廷十三隊三番隊隊長・市丸ギンの自室にて。愛を囁き合うでもない、しかし確かに愛のある行為に溺れている男女が二人。













言葉を知らぬ者の罪















「結婚しようや、乱菊」


自然と唇から零れた言葉に、市丸ギンはハッとして打ち付けていた腰の動きを止めた。
唐突過ぎる求婚宣言に、乱菊よりも言った当の本人の方が驚いているということは急に動きを停止したギンの行動からも明白であった。
溢れてくる愛しさを留める術を知らなかった、とでも言おうか。
いや、それ以前に自分達は「好きだ」「愛してる」「一緒にいよう」等の愛の言葉は故意に避けてきた関係だったのだ、何もかもをすっ飛ばしてプロポーズなど、いくら何でも可笑しすぎるだろう。



「‥本気で言ってるの?」




急速に活動を始めた思考回路を遮ったのは、乱菊の声だった。
その声には喜びよりも、疑心の色が見て取れる。



「あんな、乱菊、」




終焉への幕開けが近付いている。全てを裏切ってこの場を去る日が近付いている。
焦りや心残りが無いと言えば嘘になる。そのような気持ちからでた言葉であることは自覚が出来ていたが、如何せんソレを乱菊に伝える訳にはいかない。





「結婚、しようや。」







確かな響きと覚悟を持った二度目のソレに、未だ繋がったままの乱菊のナカがきゅう、っと締まるのを感じる。



「‥ほ、んき?」





見開かれた蒼色の瞳は、泣きそうな、とても哀しくも綺麗な色をしていた。




「今までボクが、キミに嘘ついたことなんてあらへんやろ」


「だ、って‥、」



困惑する乱菊の気持ちも尤もだ。お互いの立場や今までの関係を考えると、簡単に返事を出来るような内容では無いことも分かっている。
しかし、冗談だと言って笑い流せるだけの戯れ事では無いことも十分に分かっているので乱菊はただただギンの顔を見詰めることしか出来ないでいた。




乱菊の葛藤に気付いたのか、金色の髪を優しく梳くようにしてギンが言葉を繋げる。





「ボクと乱菊、二人だけの秘密、でええやん。誰にも邪魔させんと、ボクの全てをかけて乱菊んこと護ったるさかい、ボクのモンになってや、乱菊。」

「ギン、私のこと、好き、なの?」

「好きとか愛とかそんなモン、当の昔に越えてしもうたわ」





薄く開かれたギンの瞳に確かな真実を見取って、乱菊の瞳から涙が溢れ出す。
泣かんといてや、と優しく降り注ぐ口付けに、乱菊はこのまま死んでもいいのにと思えるほどの幸福を感じた。





恋だの愛だの、軽い響きを持つような関係ではない。そんな関係など超越した複雑な関係に自分達は居たのだ。

誰にも知られず、ただ二人だけが知っている。そんな関係が自分達には似合っている。
元より、乱菊の世界はギンで構成されていたのだから、ギンが今宵の誓いを忘れないで居てくれるのならばそれだけで奮え上がりそうな程の幸せではないか。






再び動きを再開したギンから与えられる揺れに合わせるように、乱菊の瞳から涙が溢れる。
乱れる金髪、薄く色付いた肌、唇、瞳、乱菊を構成する全ての存在がギンにとっては愛おしくて堪らない。
瞳から流れ落ちる雫でさえ愛おしくて、涙の軌跡に優しく口づけてから舐めとった。



「らんぎく、」

「ギン、ギン、」


何度も何度も名前を呼んで、何度も何度も名前を呼ばれて。
全ての愛の言葉を互いの名前に託した。







「ギン、ありがとう」






目は口ほどに物を言う、と言うのならば。
言葉にしきれぬ膨大な想いが全部伝わればいいのに、と。






(お礼言いたいのは、ボクのほうやで乱菊)






絡み合う視線には、確かに慈しみの情が溢れていた。


好きで、好きで、好きで。二人にとって互いを想うその行為は命あるモノが呼吸をするのと同じほど自然なことであると言えよう。
それゆえ二人は言葉で愛を確かめ合うという術を知らない。それでも確かに、彼等は愛し合っていた。

















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原作ではギンは乱菊に何一つ残さなかったけれど。
二人の間にこんな愛の形があったって良いと思う。

Layla様に捧げます!



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