なんて幸せな自殺行為 | ナノ







「何してるんスか、乱菊さん」





天気の良い午後。

場所は隊舎から少し離れた小高い丘。







草の上に寝転ぶ、愛しい人。
















なんて幸せな自殺行為











俺の声に気付いた彼女が、上半身を起こして俺を見た。



「わ、修兵!あんたもサボり?」

「俺はちゃんと休憩時間内っスよ。乱菊さんと一緒にしないで下さい」

「あら、生意気ね〜」




じと、と瞳を細めてこちらを睨む、そんな表情ですら美しい。



俺の自慢の、恋人。







「空、見てたんスか?」

「・・・あんた、いつから居たのよ」





霊圧まで消して覗き見なんて趣味悪いわよ、と彼女の上半身が草村に戻った。

僅かな衝撃に、豊かな胸元が揺れる。彼女の整いすぎているスタイルは確かに男のロマンとも言えるが、彼氏となった今、惜し気もなく晒される胸元に独占欲が湧かないのか、と問われれば答えはノーだ。

隣にしゃがみ込み、寝転ぶ彼女を横目で見下ろした。



(本当、罪な女性(ヒト)だよな、)










贅沢過ぎる溜め息は飲み込んだ。変わりに、幸せを噛み締める名前を呼んだ。



「乱菊さん、」

「なぁに?」

「キス、してもいいっスか?」




顔は見れないし、見せれない。

眩しすぎる微笑みに、まだ心臓は慣れていないから。
真っ赤な顔を見せたらきっと笑われるから、ちっぽけな男のプライドってヤツ。





「それを、女に答えさせるの?」

「・・・スイマセン」






失礼します、心の中で呟いてから彼女の上に被さった。

額から伸びる頬の傷に彼女の手が触れる。ドキン、と高鳴る鼓動は痛みのせいではないと知っている。


夢みたいだ、といつも思う。

夢なのでは、といつも疑う。





現実か確かめるように、目の前の唇を親指でなぞってみた。気を抜くと震えそうになる指先を見て実感する。

俺は相当、この女性に惚れている。








「乱菊さん、好きです」






ふふ、と微笑む姿は草村には似合わない。まさに大輪の華。

幸せすぎる現実に目眩さえ覚えた。




「分かってるわよそんなこと、





私もあんたが好きよ、修兵。」


「・・・!」








心臓を鷲掴みって、きっとこういうこと。呼吸すら止まる瞬間。ちなみに、爪を立ててるんじゃないかって程バクバクと痛む俺の心臓。


さようなら俺のプライド。余裕なんて空の彼方へ消えました。




(嗚呼、もう死んでもいい。)





願わくば、その唇を堪能してから。目の前の幸福にいつか殺されるだろうと覚悟して、彼の寿命を縮める原因である愛しの彼女に深く深く口づけた。







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