6 | ナノ



刻は確実に進んでる。

その中で私達は逆流していると、気付いていても気付かないフリをしている。








***











「ギン、最近よくそれ見てるわね」



乱菊の視線の先には、伝令神機がギンの手によって握られている。


最近、ピピピピという電子音が鳴る回数が増えたように思う。
電子音が響く度にギンは難しい顔をして、部屋を出るか電話を切るかしてしまう。

そしてその度に、乱菊は不安になるのだ。





「死神って一応“仕事”なんでしょ?出なくて大丈夫なの?」

「・・乱菊は何も気にせんでええよ」




ギンの眼は、未だ伝令神機へと向けられている。乱菊は伝令神機が嫌いだ。高く静かに鳴り響く電子音が嫌いだ。



なぜなら、伝令神機を見つめるギンの顔は乱菊の知らないギンの顔だから。
きっとアレが、ギンの“死神”として顔なのだろう。


以前は想像も付かなかった問いの答えが、今なら分かるような気がした。




あの優しいギンは、どんな顔をして敵を斬るのだろう?
きっと、無表情に何の感情も無しに敵を斬るのだろう。








近い、本能がそう告げている。


嫌だ、感情が考えることを拒否する。





考えてしまえば答えが見つかりそうで、背中に変な冷や汗を感じた。

何も聞かなければきっといつも通りの夜が来て、同じ布団で寝て、共に朝を迎えるだろう。

果たして、それはいつまで続く?












「ね、ギンは、何で今になって私に会いに来たの?」



声が震えたような気がする。手も震えているかもしれない。

決して聞いてはいけない質問を、本来ならば一番初めに聞かなければいけなかった質問を、聞いてしまった。




ギンは何も答えない。ただ静かに、伝令神機をテーブルの上へと置いて乱菊の方へと向き直った。





「乱菊、今から言うこと、よお聞いてや」

その言葉が、光の向こうで聞こえた気がする。

「縛道の六十一・六杖光牢」

いきなりの衝撃と眩しさに目を瞑った。








再び目を開けた時には、六つの帯状の光がギンの胴を囲うように突き刺さっていた。





「間に合わんかったか」と呟くギンの声がしっかりと耳に届いたことで、ギンが死んだ訳ではないと確認する。


「え、ちょ、ギン?」


ならばギンの身体を囲むあの光は何なのか、混乱した頭では思考回路もパニック状態で言葉も上手く出てこない。




「久しぶりだね、ギン」

第三者の声がする。そう言えば、眩しい光と共にこの声を聞いた気がする。



「乱菊、逃げ!」

怒鳴るようなギンの声が部屋中に響いても、乱菊は逃げることはしなかった。







非現実的な日常の終わりが、すぐ側までやって来ている。




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