5.5 | ナノ



かつての幼馴染(今は死神)との不思議な共同生活を始めてから、何日が経っただろうか。
もう一週間は経ったかもしれない。






今が大学の夏休みで良かった、と乱菊は心底思う。好きなだけ家に居れる、ということは好きなだけギンと一緒に居れるということになる。



しかし乱菊は、カレンダーを見て顔を歪めた。
もうすぐ夏休みが終わる。







不穏な予感が胸を掠めて、乱菊はギンを起こしに寝室へと向かった。













***












「ギーンー、おきてーー」

「んん、そない大声出さんでも起きるて・・」

「あ!ほら、また寝る!馬鹿ギンー」



寝ているギンは可愛い。

昔っからギンは朝が苦手で、睡魔を理由によく小学校をサボっていた。
現在でも続く乱菊のサボり癖は、幼い頃からのギンによる刷り込みのせいなんじゃ、と今になって思う。




ようやく、ベッドから置きあがろうとしているギンと目が合った。そして腕を掴まれた。嫌な予感がした。悪戯っ子のようなギンの笑顔は、昔から変わらない。


「乱菊、おはようのちゅうは?」

「え?」

「してくれるやろ?キッス」



腕をくい、と引かれ「してや、乱菊」と耳元で囁かれた時には乱菊の脳内はパニックに陥っていた。



「あぁあ朝から何言ってんのよ!そ、それより早くご飯食べてよね!」



いちいちうろたえる自分が悔しい。

「可愛いなぁ、乱菊は。」と頭に置かれる掌が恨めしい。


お早うさん、の声と共に唇に軽く触れる唇が愛しい。





「こんなはずじゃないのに・・・」


洗面台へと向かうギンの背中にポツリと呟いた。




「ん?何か言うた?」

「私、本当なら男を翻弄する側の人間なんだから!」



精一杯の負け惜しみに、ギンはくつくつと笑った。


「分かっとるよ。それに、乱菊を翻弄できるのは僕だけやもん」






洗面台に消えて行った背中に、勝てる日は来るのだろうか。


拗ねたフリを続けていれば、心底困ったように「ごめんな、乱菊、許してや」と謝ってくるだろう数分後のギンを想像して、こちらもタダで負けてなどあげないんだからと乱菊は笑った。








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