4 | ナノ


「ねえ、ギン。鳴ってる」

「あぁ、ええよ、放っとき。」






ピピピピ、と部屋に響く電子音。

ギンはコレを『伝令神機』だと説明してくれた。









***









「ギン、最近よく鳴ってるわね、電話。」

「電話やなくて、伝 令 神 機 やて何回も言うてるやん。」

「同じようなモノじゃない」

「ま、そやね」



ほら、まただ。と乱菊は思う。


伝令神機が鳴る度にギンは不機嫌になる。ような気がする。
と言っても、表情や声色が変わる訳ではないギンの様子に確信があるわけではなく、死神の世界にも色々あるのだろうな、と乱菊は小さな溜め息を零した。






「ね、死神の世界にも上下関係ってあるの?」


背中の温もりに体重を預けて、乱菊は上を見上げた。
開いてるのか、と尋ねたくなるような瞳だが、しっかりと微笑んだギンと目が合った。
大きな掌が頭へと置かれる。

子どもの時は何の抵抗も無く受け入れていた掌だが、大人になった今は「そんなに子どもじゃないのに」と思う。
それも心の中で思うだけで、実際は目を瞑って受け入れている自分が居るのだが。


「あるで、えらい面倒なのが。」

「へぇー、上司と部下みたいな?」

「それに加えて先輩と後輩、とかな。痛いことばっかりやしほんま嫌んなるわ」

「死神でも“痛い”とかあるの?」

「そりゃあ、切られたら痛いで。何度死にかけたか分からんわ」

「うげ、死神って大変なのね、お疲れ様」




「おおきに」と頭上から声が落ちてくる。今、髪にキスされたなぁと脳の奥で認識した。今頭に置かれている掌が、普段は刀を握っているのかと思うと不思議な気持ちだった。

この温かな掌が、血に濡れたりするのだろうか。

この優しい瞳は、どんな顔をして敵を斬るのだろうか。


ふと数年前の冷たくなったギンを思い出して、心臓が大きく脈を打った。






「乱菊?どないしたん?」

「あぁ、ごめん、何でもないわ」



背後から包まれる温もりは、頭に置かれる掌の温もりは、泣きたくなるほど暖かいのに、そういえばギンは死んでいるのだと、今更ながらに思い出した。






「そろそろ寝よか」

「うん」







ギンと再会してから早3日。
現実を捨ててから、3度目の夜になる。




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