あいらぶゆルナミ | ナノ




(題) I love you を伝えなさい

・モンキー・D・ルフィの場合







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「‥‥‥‥‥ミ、」


名前を呼ばれた気がした。

ソレはとても聞き慣れた声なのに、初めて聞くような声で、酷く不安になって重たい瞼を無理矢理開けてみた。






「 ル、フィ?」





夜明けと呼ぶにはまだ早い、つまりは深夜。視界が慣れない真っ暗な部屋で、確かに私は温もりを感じた。




「え、なに、何でいるの?」





私が寝ているベッドの横に立ち、黙って私の頬へと手を伸ばしているのは紛れも無くうちの船長。




(ロビンは今夜、見張りって言ってたっけ。)



未だ状況を掴めない頭でとりあえず分かったことは、今この女部屋には私とルフィの二人しか居ないということ。

それと視界が慣れて分かったことが一つ。ルフィが酷く、泣きそうな顔をしている、ということ。




もっと近くで確かめたくなり上半身を起こすと、今まで私の頬に触れていた手がストン、と落ちた。
ルフィのそんな弱々しい仕種に、いよいよ本気で心配になる。
変わりに、私からルフィの頬へと手を伸ばした。



「ルフィ?どうしたの?」

「  ぎゅってさせてくれ、」



返ってきたのはルフィのものとは思えないような、とても弱々しい声で。
意味を理解するより早く、私の身体はルフィの腕の中へと納められてしまった。




強すぎるほどの力で抱きしめられて、耳元から聞こえた声は震えているように聞こえた。



「もう、どこにも行くな。」

「行かないわよ、」



私はずっと、麦わら海賊団の航海士だもの。

口に出せば泣いてしまいそうで、私はぐっと言葉を飲み込んだ。





今まで沢山不安にさせた。

騙すことから始まって、裏切って、拒絶して。だけどルフィは受け入れてくれて。

仲間になった後も、不本意ながらも何度も彼等の前から姿を消した。



情報収集の為、夜の街に一人出ていくことも多い。ケスチアになって命の終わりも悟ったし、変な珍獣の嫁にさせられそうになったことも二度もある。

最近では、金獅子のシキとの一件。



ルフィはたまに、私が消える夢を見ると言った。私の今までの行動が、ルフィの心にトラウマを作ってしまった。





「ごめんね、心配ばっかかけて」


優しく、沢山の情を込めてルフィの黒髪へそっと触れた。




「もうどこにも行かないって、約束しろ。」

「私は麦わら海賊団の航海士よ。皆を必ず夢へと送り届けるわ、約束する。それに、


もし私がどっかに行っちゃっても、必ずあんたが迎えに来てくれるんでしょう?」

「あぁ、ナミが嫌がっても無理にでも連れて帰ってやるんだ、おれは」




そう言ったルフィの声は、いつもの“船長”の声だった。








『おれの航海士はお前だけ』






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