一生分の愛の言葉を | ナノ





捕まれたのは腕なのに、

突き付けられるのは刃物なのに、




何故かどうしようもなく胸が、

刔られたような気がした。













一生分の愛の言葉を












出会って、共に育って、掛け替えのない存在になって。

護りたくて、愛したくて、笑っていてほしくて。





ただ純粋な愛だった。

純粋すぎるが故に、君の為にと紅に染まった。

ある人はソレを“狂気”と呼び、またある人はソレを“綺麗だ”と褒めてくれた。




( 後悔はしとらんよ、でも )






君と出会ったこと、紅の道を進むこと、君と離れたこの距離でさえ。


君との思い出・君の為の行動に、後悔なんて生まれる訳がなくて。

ただ、欲を言えばもう少し。





背後の温もりを感じていたいだなんて。君を裏切る最後の最後に、君と触れ合うことになるだなんて。





( 皮肉なモンやなァ )










どうせなら、思い切り抱きしめてしまえば良かった。

「好きだ」と言って、「離れたくない」と言えば君はどんな反応をしただろう。




そこまで考えて、ふと漏れる自嘲の笑み。

金色の髪を想うには、夜に包まれたこの世界は暗すぎる。





白と黒に包まれた世界で、どちらにも交わらない銀色の髪は酷く曖昧な色をしている。


くしゃ、と自身の銀髪を握って、愛しい名前を飲み込んだ。







どうか彼女の美しい瞳が、涙で濡れることなどありませんように。










誰にも気付かれないように、「彼女が笑って過ごせますように」、

人工的な月明かりの下、ただ静かに一生分の愛を流した。





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