誰にだってある弱味の話 | ナノ




「おい。」

凍てつく冷気を含ませたその声に、目の前の女は気付かない。




「おい、松本。」

「もぉ、何ですか隊長。さっきからしつこいですよ?」

「‥‥」




前言撤回、

気付いていたとしても、気にしない。







誰にだってある弱味の話











この状況、まさに惨劇。


たとえ主が居なくとも、ここが井上織姫の住居だということに変わりはなく、
自分達は井上の行為によって“泊めさせてもらっている”ということを目の前の副官は分かっているのだろうか。

答えは、否。

分かっていたら、こうも好き勝手に散らかすことなど出来ないだろう。






「松本、お前だらけすぎだぞ。」
「はぁーい」
「分かってんならお前の周りに散らばるゴミをさっさと片付けろ」
「はぁーい」




遅刻やサボりは多くても、部屋を散らかして怒ったことなど今まで一度も無い。
それは単に、仕事をするべく与えられた“執務室”だからか。

いや、でも部屋だって綺麗に片付いていたはずだ。と過去に何度か足を踏み入れたことのある副官の部屋を思い返す。









(結局はアレか、こうして甘やかしちまう俺が悪いのか、)



一向に動く気配の無い副官に痺れを切らし、結局は上司である自分が散らばるゴミをまとめている。

だらしの無い副官のフォローなど、手慣れたものだ。




しっかりと、怒りに任せて放つ冷気で部屋の温度を下げておくことも忘れない。








「いやぁ、やってくれる人がいるとついつい甘えちゃって」

自身が散らかしたゴミをまとめている上司に気付き副官は、「てへv」とでも言いそうな勢いで慌てて愛想笑いを浮かべた。




随分甘やかされて育ったのだろうな、と容易に想像できる。



「親の顔が見たいもんだな」

「あら、隊長もう既に会ったことありますよ」

「‥‥。」



あぁ、そう言えば。




なるほど、アイツが。








「ちょっと隊長、何笑ってるんですか」





いつも飄々とした態度を崩さず周囲の反感を買うことを得意とするアイツが。

周りに興味も持たないと思っていたあの裏切り者がどれ程この女を甘やかしてきたのか、



想像すると自棄に可笑しかった。









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実際は日番谷は市丸のこと考えたらこんな平和に笑ってられないと思いますが(´・ω・`);
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