花束をあげる


さて、明日は僕の誕生日である。
こんなこと自分で言うのもなんなんだけどね。
そりゃあその日が近づくごとに「もうすぐだな。」なんて言われたら嫌でも意識してしまう。
それに今年の誕生日は初めて彼女がいる。
なまえはちょっと不思議なところがあるけど優しくて可愛くていい子だ。
だから、楽しみ。
自然と緩む頬をそのままに、僕は学校へ向かった。



僕となまえは同じクラスなのだけど、始業のチャイムが鳴っても彼女の姿は見えなかった。
心配になって一限目が終わってからメールをしてみたら二限目の後に返事が来てた。

「午後には行けるよ。」

「そう、待ってるね。」

そうまた返信をして携帯をポケットに入れた。
真ん中の列の後ろから二番目に位置する僕の席からでは窓の外を覗くことは叶わないけど自然に目が外へ行く。
そうしていたらいつの間に来たのか既に教師が板書を始めていた。

あと、二時間だ。

ぐっと目をつぶってちょっと気合いを入れた。



彼女が来ると宣言した昼休みになった。
僕はそわそわと落ち着かない。首を動かし目を泳がせ、端からみたら挙動不審なんじゃないだろうか。ガラ。

教室の扉が開いた。

「なまえ!どうしたんだい、その格好…!」

入ってきたのは制服を土塗れにしたなまえだった。
急いでドアのところまで駆け寄る。
近づいてみてからその体の後ろに何か持っているのに気付いた。

「へへっ。遅れてごめんね。」

そう言って彼女が差し出したのは小さな花束だった。

「お花摘みにいってたの。買うより自分でっ…アレルヤ!?」

彼女はまだ話していたけど思わず抱きしめる。
周りの冷やかしの声に彼女は焦って離してと言うけれど、今日ぐらいは我が儘を許して欲しい。
そのままギュゥッと抱きしめてたらなまえも諦めたのか抵抗する力を緩めた。

「ありがとう。」

「ううん。」

僕の後ろに回ったなまえの手に持たれた花束の甘い香りが鼻を擽る。
午前中の心配も不安も全て溶けて消えた。

少し顔を離して見つめ合う。
なまえがはにかんだ。


「お誕生日おめでとう、アレルヤ。」



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