愛しい恋人と聖夜の契りを


「はい、アレルヤ。」

「ありがとう。」

漂う香りは苦いコーヒー。受けとったマグカップは温かい。
ノエルは僕の隣に腰を下ろした。柔らかなソファに沈んで、彼女の頭は僕の肩ぐらい。

ズッと熱いコーヒーを啜る。

「にがっ!」

舌がヒリヒリする程の熱さと予想外の苦味に思わずカップから口を離す。
横からクスクスと笑い声。

「このチョコレートケーキ甘いからブラックにしてみました。」

先に言ってくれよ、なんて苦笑い。
彼女はふふっと笑うと湯気の立ち上るコーヒーを口に含んだ。

「にがっ!」

そう言った彼女もやっぱり熱かったのか、ベッと舌を出した。
見つめ合って声にして笑う。

「でもこのケーキ、本当に甘いのよ?」

「僕は甘い方が好きだからいいけど。」

「じゃあコーヒーも甘くすれば?」

なんて笑われる。

「せっかく煎れてもらったからブラックで飲むよ。」

「あらそ。」


背の低いテーブルにカッブを置く。
その手で切り分けたケーキが乗る皿を取った。
フォークで小さくして口に含む。
確かに、甘い。
チラリとノエルを見ると、様子を窺っていたのかジッとこっちを見ている。

「どう?」

その真剣な表情が可愛くて思わず頬が緩む。

「美味しいよ。コーヒーもブラックで正解だ。」

彼女は、でしょ?と誇らしげに言うとケーキに手をつけた。

「ん!やっぱり美味しい。」


カチャとフォークと皿が当たる音。
ソファのスプリングが小さく鳴る音。
コーヒーを啜る音。

穏やかに、緩やかに、着実に、時間が流れていく。


皿の上には微かに残るクリームだけ。
コーヒーからの湯気は消えてしまった。

「美味しかったね。」

「ふふ、そう言ってもらえると選んで良かったわ。」


時計が時を刻む。
君の頭の重みがかかる肩は温かい。

「ノエル。」

手をギュッと握る。

「ん?」

彼女が喉の奥を震わせた。

あんまり言葉にしては、そこから色褪せる気がした。
でもどうしてもこの気持ちを伝えたい。
だから、一言だけ、ただ、これだけ。
他に言いたいことも伝えたいこともあるけれど、胸の内を全て見せれば繋がれる訳ではないから。

「ずっとこうして、一緒にいようね。」

ノエルは僕を見上げた。

「約束ね?」

いつになく、頼りない声に思わず、えっ?と声を出してしまう。

「プレゼントはちゃんともらったけど、クリスマスに誓ってね。」

彼女の胸元のクロスが揺れた。

「離れちゃ、嫌よ。」

脇腹を固く掴まれた。
僕はノエルの肩をひいて、小さな体を抱きしめた。

「うん。」

いくらでも誓おう。
この体を離さぬよう。
この気持ちを違えぬよう。



「愛してる。」




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