粉雪とただいま


「おい…まだ買うのか?」

両手に荷物を抱えたハレルヤが眉間にシワを作りながら、前を歩くノエルに問う。

少女はスカートとコートを翻して振り返るとキョトンとした顔で、さも当たり前のように、うん、と答えた。

いつもはノエルを問答無用で甘やかすアレルヤでさえも苦笑いである。

「だってクリスマスだよ?」

「躍らされてんじゃねーよ。だいたいお前クリスチャンか?」

呆れた様子のハレルヤに、うっ、と言葉を詰まらせる。

「日本人だもの、いいじゃない。躍らされたって。」

そう頬を膨らませるとノエルはまたずいずいと前に進んだ。

それから二店回ったところでノエルがクルリと振り返った。

「二人はどっか見たりする?」

すっかり疲れきっていたアレルヤとハレルヤは顔を見合わせた。

「ねーよ。」

ハレルヤがそう告げるとアレルヤが目を丸くした。

「んだよ…。」

「いや、人は成長するもんだなぁと思って…。」

「なんだと?!」

「毎年こうやって買い物する度にプレゼント買ってないって大騒ぎするじゃないか。」

ぎゃあぎゃあとハレルヤが騒いでるのを見て、

「じゃあいいんだね。」

とノエルは呟いた。

「よし、帰ろう!」

そして二人の間に入ると腕を掴む。

「ったく…。」

呆れたようなハレルヤとは対照的に、アレルヤは、たくさん買ったね、とにこやかだ。


「わっ雪!」

そんなノエルの感嘆の声を聞き、アレルヤとハレルヤは薄暗い空を見上げた。

「本当だ…。」

「クソッ。寒い訳だ。」

一人悪態をついたハレルヤはアレルヤに怪訝な目で見られた。

「明日は雪合戦だね。」

「めんどくせぇ。」

「とか言ってやり始めたら一番張り切るくせに。」

「うっせぇ!」

そう叫ぶハレルヤを笑う。

緩やかに、穏やかに雪が降る。


マンションに入っても先頭を歩くのはノエル。

「帰ったらアレルヤが作ったご飯だね。」

「ちゃんとケーキも焼いてあるよ。」

そう言いながらノエルの頭にかかった雪を払う。

「楽しみ!」

玄関に手をかける。

「ただいまー!」


通路の窓から風が雪を連れて舞い込んだ。





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