まるでシャンパンの泡のような


わたしが座る椅子を引いた彼の動作は余りに自然で。
彼がグラスにシャンパンを注ぐ姿は綺麗としか言いようがなくて。

わたしは人で彼は国だなんて、わからない。
わたしが生きる一年は彼にとって何秒何分何時間?

「アーサーがシャンパン飲むと思わなかった。」

思わずそんな小さな意地悪をしたくなる。

「聖夜ぐらいは、な。」

「でもフランシスんちのじゃない。」

そう言うと余裕そうな顔をしていたアーサーも、ゲッと表情を歪ませた。

「その名前出すんじゃねーよ、思い出したくもねぇ…。」

「去年は一緒に暴れてたらしいですが?」

「おまっ…!それ誰に聞いたんだよ!?」

慌ててるアーサーを尻目にふふっと笑う。

「そんなこと聞いてどうするのよ。ホラ、食べよ?せっかく作ったのに、お料理、冷めちゃうよ。」

アーサーは渋々といった感じでグラスを手にした。
わたしもそれに倣ってグラスを取る。

「乾杯。」

グラスを鳴らしたいところだけど、英国紳士であるアーサー相手にそれは許されない。
品良く、少しだけグラスをあげる。
口につけたグラスを傾けるとシュワシュワと泡が弾けて溶けていった。

「さすが美味しいわ。」

「あいつは料理とワインだけは認めざるを得ないよな…。お、俺だって料理は…!」

死人が出るからやめてくれ。
そろそろツッコんでやるのも色々と疲れるから目を細めてやり過ごす。

「その…悪かったな、全部作らしちまって…。」

突然のことに目を丸くする。
ああ、料理の話になったからかな?
真っ赤な顔でそっぽを向いたアーサーは、もう立派にデレしか出てない。

「いいよ、別に。アーサーにはわたしの腕によりをかけた料理を食べてもらいたいし。」

「んな?!」

チラッと窺うとアーサーが顔を真っ赤にしている。
楽しい!この人可愛い!

「あはは!アーサー照れてる!」

「ううううっせえ!」

照れ隠しかガツガツと料理を食べるアーサー。

まぁ、本音なんだけどね。
フッと小さく笑ってわたしも料理に手をつける。

「しかしアーサーからネックレスもらえると思わなかったわ。」

「お、俺の横に立たせるのに恥ずかしくねぇようにだな…。」

「綺麗ね。嬉しい。」

「おう…。」

胸元で光るダイアモンドを手に乗せる。いま此処に一緒にいるのに、どうしても不安になるの。
それでも貴方の中ではいつも笑顔でいたいから、貴方が笑うようにわたしも笑うの。
それがわたしの願い、望み。

いつか消えてしまうから。

口につけたグラスを傾ける。
そう、この泡のように溶けて消えてしまうのよ。

だから、そうなる前に…

貴方といるわたしは永久に幸せであるように。

つなぎ止めて。




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