聖なる夜に慈しみを


「クリスマス、かい?」

わたしはそんなアレルヤの問い掛けに大きく頷いてみせた。
彼の顔といったら、「ポカン」といった擬音がよく似合う表情で、思わず緩む頬が抑えられない。

「どうせあんたとハレルヤのことよ。毎回、大したことしてないんでしょ?」

そう問い返してやると、図星なのか曖昧に笑う。

そうだと思ったわ。

「まぁ、一応ご馳走にはするけどね。」

苦笑しながら彼が言う。

ご、ご馳走ですって…?

「でも今年はハレルヤがいないから、何もしない、かな。」

アレルヤは、お得意の人の良さそうな笑みを浮かべた。

「今年はわたしがいるわ!」

そう言ってやると、それ当日に言うかい?とアレルヤが笑った。

笑ってばっかり。

「とりあえずケーキ買おう、ケーキ。」

わたしが手を引くと、はいはい、とやっぱりアレルヤは笑った。

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ショートケーキ…や、チョコレートケーキも捨て難いけどクリスマスといったらブッシュ ド ノエル?いやいや苺の誘惑が…!

ショーケースとにらめっこ。
ふと上の段に目を移すとアレルヤの姿が映っている。
なんとなく振り返ってみた。

「なに笑ってんのよ。」

少し離れているから雑踏に紛れて声は聞こえないけど、口元に手を当てて、目を細めて眉を下げたその表情は声を押し殺して笑っている。

軽く睨んでやると、行き交う人を避けながらアレルヤが歩いて来る。

しゃがんでいるわたしが、それでなくても大きい彼を見るには首を思い切り上に向けなくてはならなかった。
彼はやっぱりただニコニコしてるだけだからショーケースに目を戻す。

ツンとほっぺを刺された。

「何すんの。」

「いや、膨らましてたら突かなきゃダメかなぁと思って。」

「意味がわからん。そんな礼儀はないですよ。」

ベェッと舌を出してやる。

「あっ、そうそう礼儀とかそんな感じ。」

なのに何か新しい発見をしたみたいな喜び方をされるとなんだかやるせなくなる。

「あ、余計膨らんじゃった。」

なんて、ビックリしたように言われて慌てて頬をおさえる。
無意識に膨らむって子供か、わたしは。

「ごめんね。ケーキ選んでるノエル、すっごく楽しそうだったから。」

クスクス笑うアレルヤ。
あっそ、としか言えなかった。

結局わたしはブッシュ ド ノエルを買った。
限定には抗えなかったのだ。

ケーキはアレルヤがどうしても持ちたいと言うから持たせてやる。

「ノエル。」

「なぁに?って…わっ。」

不意に手を握られた。

フフッと笑うアレルヤ。

「寒くない?」

確かに邪魔だから、と手袋を取り去った手は冷えて痛いぐらいだ。

だけど、

「今日繋いでたら付き合ってるみたいじゃない!」

「僕はそれでいいっていうか…。」

ぐいと手をひかれる。
バランスを崩してアレルヤの胸に手をついた。


「ノエルのこと、
好きなんだけどな。」








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